読書『名前のないカフェ』(新潮社)ローベルト・ゼーターラー著/浅井晶子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『名前のないカフェ』(新潮社)ローベルト・ゼーターラー著/浅井晶子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。舞台は第二次世界大戦後のウィーン。孤児院で育った男が開いた小さなカフェに集まる人の、それぞれの物語が紡がれます。読了後のなんとも温かい感じに既視感を覚えたのですが、この著者の本を読むのは初めましてでした。

戦後の名残あるエリアが少しづつ復興していくなか、時代に取り残されていく焦燥感や諦めを感じながら生きる人たちと、そうした孤独を抱えた人たちにとって大切な居場所となるカフェの物語。カフェがオープンしてから閉店するまでの10年間のお話です。上の写真は本書の裏表紙。「人は、心配より希望を少し多めに持ってなきゃ。」というのは、主人公ジーモンの同居人である老齢の未亡人のセリフです。ほんの少し多めに希望を持つことで、一歩前に進むことができる人生があることを、みごとにあらわしていました。

新潮社の公式サイトでの本書の紹介で、エッセイストの松浦弥太郎氏による書評が秀逸でした。「やさしさとは、何かをしてあげることではなく、つねに注意を払い、相手の時間を奪わないことなのかもしれない」という文章が、本書の核心をついていると思いました。これは、主人公でありカフェのオーナーであるジーモンの姿勢そのものでした。物語の終わり方は少々切ない感じがあるのですが、読後とても優しい気持ちになりました。というわけで、ローベルト・ゼーターラー氏の著作も追っかけたいと思います。邦訳がどれぐらい出ているかわかりませんが、まずは図書館蔵書の物色から始めます^^

『名前のないカフェ』(新潮社)ローベルト・ゼーターラー著/浅井晶子訳