続・読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著

読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)をブログにアップしていたのは、先週のこと。実は中身があまりにも濃かったので、一度読んだだけでは消化しきれず、2周目に入っていたのでした。前回も書きましたが、本書タイトル『まちの魅力を引き出す編集力』は、『○○の魅力を引き出す編集力』と「○○」部分を多様に置き換えて考えることができるのです。つまり業種を問わず、活かせる要素がてんこもり、ということ。

実際に桜井さんとお話しすると、ユーモアあふれる話題展開のなかに、たくさんの、文字通り「鍵(キー)」となる「言葉(ワード)」が出てきます。そしてそれらのキーワードの背景を探ると(あるいは解説してもらうと)、腑に落ちることがたくさんあって、自分の事業に置き換えて考えるとどうなるか!?を考える最高のエクササイズになります。そんな珠玉のキーワードの数々が本書にもたくさん出てきますので、ご紹介。


  • 「何を面白く感じるか」はまったくの自由
  • 愛をもって「ひたすら見る」
  • 民俗学的アプローチ
  • 図書館で文献をあたる
  • 魅力の「本質」は専門家から探り、本物から学ぶ
  • はまっている人=専門家
  • 「日常」が違う=文化の違い=固有の文化
  • 「自分の価値観」と対峙する
  • 名前をつける(固有名詞化する)
  • 「BEFORE→AFTER」で考える
  • 誰とやればうまく行くか?
  • ボランティアはしない、させない
  • 三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)と四大要素(食・もの・体験・人)
  • 「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」
  • 「笑い」「驚き」「誘い」
  • ハッピートライアングル(三方よし)
  • 最初の一人
  • 愛している者にだけ見えるものがある

『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著より


それぞれのキーワードの意図するものは、とても深いです。ぜひ本書でじっくり読み取ってみてくださいね。

やっと!久しぶりのコンサート「古澤巌 ヴァイオリンの昼と夜」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

やっと!久しぶりのコンサート「古澤巌 ヴァイオリンの昼と夜」

音楽も演劇も再開しているのはわかっていましたし、魅力的な催しに心惹かれることが増えてきてもいましたが、なかなか足を運ぶに至っていませんでした。今年(2021年)5月に発表された文化庁長官・都倉俊一氏の「文化芸術に関わる全ての皆様へ」のメッセージを読んで勇気を得ていたところに、タイミングよく演奏会の案内が届き、個人的に「やっと復活!」した週末でした。

出かけたのは、隣町にある宗像ユリックスハーモニーホールでの「古澤巌 ヴァイオリンの昼と夜」。古澤巌さんの演奏会は、宗像でほぼ毎年開催されています。宗像ユリックスハーモニーホールは、全部で600席ちょっとのコンパクトなホールで、いわく「どの席で聴いても音が好い具合に響く」のが人気です。コロナ対策で座席がひとつ置きに設定されるなか、後方中央の席をゲットできました。わたしは昼の部でしたが、はじまってみたらほぼ満席でした。

ヴァイオリンとピアノのシンプルな構成。はじまってすぐにその音色の美しさに涙腺崩壊。わたしは音楽は「聴くだけの人」なのでまったく詳しくありません。でも自分の好きな音、そうでない音はわかります。古澤巌さんのヴァイオリンも、金益研二さんのピアノも、生で触れるのは初めてでしたが、とても心地良くすんなりと入ってきました。

一緒に行ったダンナはダンナで、ソナタがはじまるとすぐに舟をこぎはじめました。第1楽章が終わると目を覚まし、第2楽章、第3楽章がはじまるとその都度また舟をこぎ…(笑)。でもコンサートで眠くなるのは、音楽の効果で深いリラックス状態に導かれているから=音楽が脳にも体にも届いている証なので、悪くないことなのだと聞いたことがあります。周りに迷惑をかけることが無ければ、これもまた良しです。

途中休憩を挟んでの約2時間。全体的には小品中心の選曲で、カジュアルに楽しめました。曲の合間に入る古澤さんのトークもさりげなく示唆に富んでいて、大満足。足を運んでよかったと、心から思いました。むしろ、今まで「ヴァイオリンの昼と夜」に行かなかったことが悔やまれるくらい。来年以降必須のイベントとなりそうです。

読書『預言者ノストラダムス』より、「預言」と「予言」の違い。

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読書『預言者ノストラダムス』より、「預言」と「予言」の違い。

先日アップしたブログ「読書『預言者ノストラダムス 上・下』(集英社)藤本ひとみ」で、『「預言」と「予言」は違い、その違いはとても大きいのだということも、本書内のノストラダムスのセリフによってわかりました』と書いていたところ、「どう違うの?」というご質問をいただきました。そうですよね、気になりますよね。

一般的にはどのような理解なのかをいくつかの辞書で調べてみたところ、おおよそ次のようなことが書いてありました。

  • 【預言】神からの啓示を受けた人が「神の言葉」として伝えるもの。
  • 【予言】未来のものごとを予測して伝えるもの。宗教的な意味合いは無い。

「預」は「預(あず)かる」で、神さまから預かった言葉、ということですね。主に一神教のユダヤ教やキリスト教で用いられる概念のようです。それに対して「予」は「予測」であり、「科学的推論や統計学的推論により」というような前提が入ると考えると、その違いが分かりやすいと思います。例えば天気予報は科学的推論に基づく予言、占いは統計学的推論に基づく予言、と言い換えることができそうです。

『預言者ノストラダムス』のなかでは、ノストラダムスの時代における「預言(者)」と「予言(者)」の違いが意味するものは、当人の命にかかわることでした。当時の宗教観のもとでは「神(キリスト)の言葉を伝える預言者」であれば(そしてそれがちゃんと当たっていれば)大切に重用されますが、「(科学的・統計学的に)予言」できるとなると、神の存在を否定するものとして異端視されかねないということになります。

そのような背景があっての、読書『預言者ノストラダムス』での登場人物たちの駆け引きでした。こうしたちょっとしたこと(でも、大きなこと)を知ることが、歴史小説の面白さを倍増させていきますね。

読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著

魅力発掘プロデューサー・桜井篤さんの初の著書。桜井さんと出会ったのは、2010年のことですから、10年以上のお付き合いになります。と書いて、まだ10年ぐらいしか経っていないことにびっくり!…と感じるぐらい、お世話になっています。その桜井さんの著書をこのブログでご紹介できるのが、とても嬉しいです。

表紙に「地域の“面白さ”を発掘して、観光商品化&プロデュース」とあるとおり、観光振興のプロ。ただ、日本各地に数多いる「観光コンサルタント」や「町おこしコンサルタント」的な人たちとは、まったく違います。任された地域にかける「ハラの座り方」「愛情の注ぎよう」「フィールドワーク力」「文献へのあたり方」…その徹底ぶりは他の追随を許さないものがあるのではないでしょうか。「何がどう違うのか」その圧倒的な違いは、本書を読めばご理解いただけると思います。

事例も豊富なら、実際に取り組んでこられた成果(エビデンス)に基づく理論も明快です。桜井さんの持つHow to とWhyが惜しげもなく公開されています。タイトル『まちの魅力を引き出す編集力』は、『○○の魅力を引き出す編集力』といろいろなものに置き換えて考えることも可能です。商品であったり、人物であったり、いろいろなことを当てはめて考えることができます。実のところ、わたしが桜井さんに出会った一番最初のきっかけは「花祭窯の魅力を引き出す編集力」を学ぶためでした。

「○○の魅力を引き出す編集力」とはつまり、いろいろなものに当てはまるブランディングの教科書であるということです。観光振興に興味のある方も、そうでない方も、ぜひ^^

STEAM教育って?の続き。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

STEAM教育って?の続き。

「STEAM教育」なる単語が気になったのがつい先日。さっそく本や雑誌などから情報を集めています。実は、昨日ご紹介した絵本『アートのなかでかくれんぼ』シリーズも、表紙の端の方に「STEAM教育のAをのばす!」と書いてありました。A=Artですね。「SDGs(持続可能な開発目標)」もそうですが、時流に乗る言葉(概念)は、すぐにこのように便利に使われるのですね(笑)。

さて調べ始めてすぐに「あら」と思ったのが、「STEAM教育」が提唱され始める前にはに「STEM教育」であったらしいということ。STEM教育が提唱され始めた後に「Artも必要だよね」ということになったのでしょう。ということは、やはりオードリー・タン氏が著書『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』で書いておられたように、今後は「+D」すなわちDesign(デザイン)の概念も加わるのでしょうね。上の写真は、その目次。

関連本を調べていて出てきた書籍のなかに、山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社新書)を発見。かの本は繰り返し読みましたので、なるほど概要がつかめたような気がします。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』では、「STEAM」のなかでもとくに「A」が強調されていましたが、2019年に福岡市美術館で開催された講演会でのお話を合わせて考えると、「アートとサイエンス」というつながりが少し見えてきました。

次の段階としては「実際にどのような教育を、どのように実践するのか」が気になります。これについては、雑誌AERA(2021年2月1日号)に特集記事を見つけました。日本国内で実践している高校(・中高一貫校)の事例なども載っていて、興味深い内容でした。以下備忘。


  • 思考の「言語化」
  • 「知る」と「創る」の循環
  • 身体性
  • 五感を使って
  • 面白いからやる
  • 他者と協働できるコミュニケーション能力
  • 教科横断
  • 研究者であれ
  • 当事者意識を持って課題解決に挑める人材
  • STEAMライブラリー事業
  • オープンイノベーション

雑誌AERA(2021年2月1日号)より


国内で関連書籍や実行組織がさらに充実してくるのは、今からなのだろうと思います。またこれもSDGs同様ですが、そのような言葉や概念が無い時代から、すでに実践されていることはたくさんあって、そういうヒト・コトにスポットライトが当たってくるのだろうな、と思います。

読書『アートのなかでかくれんぼ1 ルーブル美術館でさがせ!』(フレーベル館)

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読書『アートのなかでかくれんぼ1 ルーブル美術館でさがせ!』(フレーベル館)ニコラス・ピロー作/木村泰司日本語版監修

とっても面白い絵本を見つけました。「世界的に有名な美術館蔵の作品のなかに、その美術館の人気者を紛れ込ませて探す」遊びの絵本。美術館版の「ウォーリーを探せ」と言えば伝わりやすいでしょうか。

現在3種類出ているシリーズものです。そのひとつめが、ルーブル美術館蔵のヒッポ(Hippo=カバ)を探せ!というわけで、思わず手に取りました。上の写真は、藤吉憲典の作るHippo。エジプトの遺跡から出土する副葬品(と考えられている)Hippoはロンドンの大英博物館にもありますし、キャラクターとして有名なのはニューヨークにあるメトロポリタン・ミュージアム(MET)です。

ルーブルに足を運んだのは、もう20年以上前になります。「ヒッポを探せ!」をやりながら、また行かねば!の思いも新たになりました。ヒッポ探しは比較的簡単にミッションコンプリート。

続く2作は、オルセー美術館バージョン。こちらでは「シロクマのポンポンを探せ!」になっています。オルセーには足を運べど休館中、ということが2回もあって、未だなかに入ったことがありません。日本で開催された「オルセー美術館展」には足を運んだことがありますが。

シロクマのポンポン探しは、ヒッポ探しに比べると、難易度がやや上がりました。少しづつ目が慣れていくので、焦らず取り組めば見えてきます。

実際にチャレンジしてみて(探してみて)、作品に目を凝らし端から端まで眺めるので、たしかに「見る」訓練になると思いました。が、同時に「一生懸命探す」と「絵や彫刻作品をじっくり見る」は同じではないとも思いました。美術鑑賞法のひとつとして楽しいのは間違いないので、「見る」練習としてプログラムを作るのは面白そうです。世の中のすべての美術館で、自館バージョンの「○○を探せ!」を作ったらかなり面白いことになるはずです。

作者のニコラス・ピローさんがどんな方なのか、調べることができなかったのですが、日本語版を監修した木村泰司さんは美術史家でいらして、著書を読んだことがありました。美術教育関連の本や絵本がどんどん出版される今日この頃ですが、久しぶりに純粋に面白がって読む(遊ぶ)ことができた絵本でした。

新作ができるとやっぱりワクワク。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

新作ができるとやっぱりワクワク。

食器でもアートでも、藤吉憲典の新作ができるときは、毎回ワクワクします。先週末は、ロンドンSladmore Contemporaryでの次の展覧会に向けた作品が5つ、窯から上がりました。本窯焼成の後、赤絵窯に3回入って、やっと出来上がり。

白熊(シロクマ)、豹(ヒョウ)、ヒクイドリ、ケープペンギン(アフリカペンギン)、カバ。動物園のような顔ぶれは、テーマ「Endangered Animals(絶滅危惧種)」での制作です。コロナ禍で遠方への移動が難しいなか、近場の動物園に足を運び、写真データをたくさん集め、というところから制作スタートしたのでした。

今回はテーマをいただいてから、作品として出来上がるまで半年ほどでした。新しいものを生み出すのには時間がかかるので、半年での完成は早い方です。作家がもともと作りたいと考えていた顔ぶれだからこそ、テーマをいただいたときにすぐに反応できたのだと思います。写真は今回の新作のひとつ、豹。

豹陶箱 藤吉憲典
豹陶箱 藤吉憲典

ワクワクと嬉しく眺めるのも束の間、サイズを測り、撮影し、梱包して海外発送準備にとりかかります。作品が出来上がってから花祭窯に居るのはほんの数日。ロンドンで展示されている様子をこの目で見たいなぁ、と思いつつ。

海外発送準備は何回もしてきているものの、発送を完了してしまうまで、未だ緊張しっぱなしです。発送が済んだら、次は無事に届くことを祈るばかり。ギャラリーから到着報告があればひとまず安心するも、今度は「送り出した作品たちが素敵なコレクターさんと巡り会い、それぞれのお宅で愛されますように」と、子どもを送り出す親の心境です。

STEAM教育って?

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

STEAM教育って?

「STEAM教育」なる単語が目につくようになったのは、わたしにはごく最近のことで、あまり気に留めていませんでした。が、先日読んだ『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)のなかにその概要を説明する一節を見つけました。途端に興味がわいてくるのですから、我ながらなんとゲンキンなのだろうと思います。

『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』によれば、S=Science(科学)、T=Technology(技術)、E=Engineering(工学)、A=Art(美術)、M=Mahtematics(数学)を総合的に学習することの重要性を説いたもの。最近はさらにD=Design(デザイン)を加えて、「STEAM+D」教育ともいわれるのだそうです。

この説明を見たときに思い浮かんだのは「リベラルアーツ」でした。リベラルアーツの起源は、自由七科「修辞学」「論理学」「文法学」「数学」「幾何学」「天文学」「音楽」からなる、幅広い内容だと言われています。日本語では「教養」とされることが多く、その「教養」がさらにさまざまに解釈されています。個人的には「リベラルアーツとは、人間の思考基盤となる基礎学問や教養」というような説明が、今のところ一番使いやすく感じています。

少々乱暴な解釈かもしれませんが、「STEAM」教育とは、デジタル時代となった現代におけるリベラルアーツなのかしら、と。「STEAM+D」教育の重要性を説明するオードリー・タン氏のことばが、とても理解しやすかったので、以下に共有しますね。


  • サイエンスやテクノロジーをイノベート(革新)していくためには、創造性が不可欠なのです。
  • 根幹は科学と技術(SとT)にあります。(中略)それはソーシャル・イノベーションの出発点となる場所であり、ここから社会は発展していくからです。
  • 科学技術では解決できない問題に対処するために美意識を養う
  • 直面した問題が非常に大きかったり、複雑だったり、たとえば気候変動のような問題に対処する場合に、サイエンスやテクノロジーのような直線的な思考だけで問題を解決することは、不可能です。
  • そうしたときに、既存の枠から飛び出すことや、創造力を発揮することが非常に重要になります。
  • プログラムをどれだけ上手に描けるかどうかは、母国語の運用能力がどれほど優れているかにかかっている
  • デジタルの時代になればなるほど、文学的素養は欠かせず、重要性を増すのです。

『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)より


「STEAM+D」教育に関する情報に、これからちょっと注意を払っていきたいと思っています。

In the Summertime – Sladmore Contemporary / Sladmore Gallery

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

In the Summertime – Sladmore Contemporary / Sladmore Gallery

6月17日(木)から7月16日(金)までの一か月間、ロンドンのSladmore ContemporarySladmore Galleryで、新しい展覧会を開催しています。二つの会場を使い、ひとつのテーマで近代彫刻と現代彫刻の両方を楽しんでいただくことができる、Sladmoreならではの贅沢な展覧会です。

In the Summertime
Country life / wildlife / sporting life

「Sporting Animals」のテーマで制作の相談が来たのは今年初めのことでした。日本語にすると「狩猟で活躍する動物」とでもいうところです。今回の展覧会の電子カタログでは、藤吉憲典の作品は二つ掲載されています。

コンテンポラリーでは、所属アーティストの最新作を見ることが出来ます。毎回の展覧会オープンに合わせて電子カタログを公開するようになったのは、コロナ禍で展覧会会場にお客さまが来場ができるかどうか不確定な状態が続いた昨年から。会期中にロックダウンに入っても、ウェブ上で公開されるカタログは、どなたでも見ることができます。

もちろん購入も可能です。興味のある作品を見つけられましたら、ぜひSladmore Contemporaryにメールでお問合せくださいませ。

読書『預言者ノストラダムス 上・下』(集英社)藤本ひとみ

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読書『預言者ノストラダムス 上・下』(集英社)藤本ひとみ

一人で勝手に「藤本ひとみ祭り」継続中。約1か月ぶりの藤本ひとみさん。タイトルは「ノストラダムスの大予言」のノストラダムス。そういえば、ノストラダムスの名前は子どもの頃から知っているのに、「大予言」のイメージだけが独り歩きして、彼の生きた時代や地域については何も知らなかったことに思い至りました。

本書の舞台は16世紀フランス。ここまで『皇妃エリザベート』『王妃マリー・アントワネット<青春の光と影>』『王妃マリー・アントワネット<華やかな悲劇のすべて>』『アンジェリク』『ハプスブルグの宝剣』と17-18世紀ハプスブルグ家周りのストーリーが続いていましたので、それらより少し前の時代となります。読後にメディチ家、ハプスブルグ家の家系図と、ヨーロッパ地図を確認し、時代的地理的にどのあたりになるのかを確認。

さて『預言者ノストラダムス』、もちろんノストラダムスは登場し重要な役割を果たすのですが、ノストラダムスの物語というよりは、時の皇帝アンリ2世の皇妃カトリーヌ(前半でアンリ2世は亡くなるので、そこからは元皇妃)の物語でした。

国同士の争い、宮廷内での争いなど、藤本ひとみさんっぽいストーリー展開に引き込まれ、あっというまに読了。当時の宗教観(カトリックとプロテスタント)、占星術・占星術師の位置づけが、物語により深く織り込まれていたのが、既読のものと異なっていると感じました。

占星術師や預言者(予言者)の、当時の政治における役割が垣間見えました。彼らを使う側の思惑だけでなく、使われる側の思惑も当然ながらあることに、あらためて思い至り。手厚く重用されることと異端視されることが紙一重の立ち位置にあって、いかに自らの立場・命を守っていくか。例えば「預言」と「予言」は違い、その違いはとても大きいのだということも、本書内のノストラダムスのセリフによってわかりました。ノストラダムスをもっと中心に据えた物語もぜひ読んでみたいと思いました。もちろん著者は藤本ひとみさんで。

↓ちなみにアマゾンではすでに中古本のみの扱いでした。

上下巻、合わせて約700ページです^^