あらためて、蕎麦猪口。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

あらためて、蕎麦猪口。

蕎麦猪口は、作家・藤吉憲典にとっても、わたし自身にとっても、花祭窯を営んでいくうえでの一つの精神的支柱です。いわば、基本のなかの基本。

藤吉憲典の器=肥前磁器の素晴らしさを知っていただく入門編として、ご相談があった時には、蕎麦猪口をお勧めしています。その理由は、もともとはやきもののド素人であったわたし自身が、蕎麦猪口の魅力に引っ張られて学んできたからにほかなりません。

蕎麦猪口を楽しむことは、日本の磁器の歴史や江戸時代の風俗を学ぶことにつながり、食べる器・飲む器と食文化を考えることにつながります。実用的に楽しみながら教養が身につく。そのきっかけとなる器が、蕎麦猪口です。

そんな蕎麦猪口の魅力をまとめた小冊子「蕎麦猪口の文様小話」をまとめたのは、16年前。引き出しを整理していたら出てきたので、少しづつ内容をご紹介することにいたしますね♪


はじめに~そばちょこって

「蕎麦猪口」ってなんでしょう。そもそも小碗、小鉢のような形のものが「猪口」と呼ばれており、「そばちょこ」は「蕎麦」用の「猪口」だから、蕎麦やうどんのつけ汁を入れる器。

わたしたちが「蕎麦猪口」と呼ぶ器が盛んに作られたのは、蕎麦やうどんが庶民の食文化として広まった江戸時代中期~後期。ところがそのころ既に「そばちょこ」という言葉で呼ばれていたかというと定かではないそうです。

※『蕎麦猪口の文様小話』「ふじゆりの蕎麦ちょこ蒐集」編より


つづく。

写しで、質を上げていく。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

写しで、質を上げていく。

「写し」の文化については、過去にもたびたび話をしています。

江戸時代から続く、日本のやきもの(和食器)文化の継承は、「写し」によってなされてきたとも言えます。「コピー」が質を劣化させながらの表層的な真似であるのに対して、「写し」はオリジナルを超える良いものを生み出そうとする行為。

創業から20年以上経つと「古典文様を写してつくったもの」もたくさん。そこからさらに「自分が過去に写したものを、さらにグレードアップさせる」制作へと続いていきます。かたちをつくるときも、文様を描くときも、前作よりもっと良いものを、と。永遠にゴールは無いなぁと、見ていてつくづく感じます。

写真は、藤吉憲典の「染錦丸文そら豆型小皿」。現代的な三つ足のそら豆型小皿に、江戸の人気文様「丸文」を写した、創業初期からの定番です。昨日、久しぶりに窯から上がってきたのを見て、あらためて写しの面白さを思いました。

染錦丸文そら豆型小皿 藤吉憲典

思わぬところから、お題。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

思わぬところから、お題。

創作のヒントはどこに転がっているかわからないものですね。ほんとうに、思わぬところから、絶妙なタイミングでお題が降ってきました。

実際のところ、客観的に面白そうと思えるお題が降ってきても、作家本人・藤吉憲典が「面白そう!やってみたい!」と思わなければ決して「かたち」にならないので、これはまさにタイミングです。

昨年から藤吉憲典が積極的に制作をはじめた「陶板レリーフ」。磁器彫塑による半立体に彩色での表現というのは、誰にでもできるものではなく、技術とセンスが最大限に発揮できる土俵です。これまでに、人魚シリーズやシマウマシリーズの作品ができていますが、ここに「歌舞伎」というお題が降ってきました。

上の写真は、さっそくの第一作目。ひとつ作ると「甘いところ=ここをこうすればもっと良くなる」が見えてくるそうで、ここから先の展開が待ち遠しいところです。どうぞお楽しみに!

着々と納品中。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

着々と納品中。

ダンナ・藤吉憲典が今年の書き初めで 「目の前のことを丁寧に一つずつ」 と書いたとおり、昨年からお待たせしていたご注文品の制作・納品が、ひとつづつ進んでいます。この上半期は特に、そこにしっかり注力してまいります。

お客様に器や作品をお届けできるのは、やっぱり嬉しいです。お届け前に「お待たせいたしました」と発送のご連絡をすると、皆さん喜んでくださいます。つくり手を信頼してお待ちくださっていることが伝わってきて、ありがたいなぁと、つくづく思います。

特に和食器は、季節にタイミングよくお使いいただけるよう順番を意識したり、お店のオープンに合わせてお送りできるようにしたり、出来るだけ心配りしたいと考えています。一人でつくる=限られたキャパシティのなかで、どう割り振りするか。

「待った甲斐があった!」とおっしゃっていただけると、「よかった!」と安堵します。器もアートも、旧作も新作も、ご期待以上のものを作ってお届けしたいと、全力で取り組んでいるつくり手の姿を見ているので。

ご注文をくださっている皆さま、ぜひ楽しみにお待ちいただけると幸いです。

日本で、藤吉憲典のアートを。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

日本で、藤吉憲典のアートを。

ご覧いただき、お買い上げいただける場所ができました!

これまで海外個展用か、特定のお客さま用に作ることがほとんどでしたので、津屋崎の花祭窯にお越しくださっても作品をご覧いただけないこともありました。「国内ではどこに行けば見れるの?」とのお問い合わせに、ようやくお返事できることを嬉しく思います。

「インテリアアート」を提唱する、インポートインテリア・DONO(ドーノ)さん。東京・青山エリアにあるDONOさんのショールームで、ご覧いただくことができます。 数は多くはありませんが、藤吉憲典の作品世界と、アートを自分の生活空間に採り入れたときの豊かなイメージを感じていただける場所です。

オーナーの上田桐子さんのアートに対する考え方は、これまでのわたしたちのスタンスと共通点がとても多く、ぜひ作品をお任せしたいと思いました。藤吉憲典のアート作品は、特別な展示スペースを必要とするアートではなく、ふだんの生活空間・仕事空間を彩るアートが多いです。桐子さんから「インテリアアート」という言葉を聞いたとき、そのコンセプトがぴったりと理解できました。

日本でのアート作品紹介はここがスタート。これからの展開がとっても楽しみです。

美しい英文。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

美しい英文。

何年か前に『英語のお手本 そのままマネしたい「敬語」集』という本を手に入れて、いつも手元に置いています。同じ意味でも、より丁寧で品のある言い回しや表現ができるといいな、という思いです。瞬発力の求められる会話の場面では難しくても、せめて少々時間をかけることのできるメールでは、少しでも丁寧な英語を使えるようになりたいと思いつつ。

ところが実際には、なんとか伝えるので精いっぱい。「より丁寧で品のある言い回し」への道のりははるか遠く。そんなわたしにとって、一番身近なお手本は、ロンドンのギャラリーからくるメールの文面や、彼らが作ってくれる、藤吉憲典の紹介文など。「そっか、こんなふうに言ったらいいんだ!」と発見ばかりです。

昨年12月のロンドン個展の際に彼らが作ってくれたカタログが先日手元に届き、あらためて英文表現の妙に嘆息。わたしも英文でも作ってみていたのですが、日本語原文は同じなのに、英文表現がまったく違っていました。

以下、藤吉憲典のアーティストステートメントをご紹介。ロンドンのハイエンドギャラリーが英訳すると、このような表現になる!のです。


Kensuke Fujiyoshi artist statement

For me, making art is about filling in the gap between the world of reality that you see before your eyes and the world of fantasy inside your head.

I create because I want to create. I don’t create anything I don’t desire to. These desires come to me one after another. I think that the reason I exist is to create.

I’m always thinking about how I can make works that I find satisfying. Day by day, I constantly make small improvements; I imagine that I’ll never be able to create something that is perfect to me. This makes me want to keep creating all the more.

My creativity finds its source both in the familiar beauty of nature experienced in everyday life, and in the beauty possessed by traditional objects. To see, and feel, shape and colour. The primary experience of one’s own senses is everything.

For someone simply to tell me that they like my works is my greatest happiness. As for the message I’d like to convey through them. I leave that for each person receiving it to interpret. The message of each work is simply the feelings of the people who experience it.

If however, I do have one particular obsession, it is this; to use traditional techniques to express something new. There is meaning in continuing to create through the work of your own hands. Without excessive concern for originality, I use the techniques I have inherited to build my own form of expression.

Pottery is something fragile. But if handled carefully it can be last hundreds of years. My aim is to make things that will be loved a thousand years from now.


日本語での言い回しの意図を汲んで、このように英文化してくださるギャラリースタッフに、心より感謝です。

絵描きになりたい!の夢。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

絵描きになりたい!の夢。

昨日のブログでお伝えした、上海での「日本現代陶芸の逸品鑑賞体験会」の続き。現地スタッフさんが、藤吉憲典在廊当日の様子を伝えてくださいました。

作家来場ということで、急遽開催されたアーティストトークや描画のデモンストレーション。事前告知をしていなかったにも関わらず、たくさんのお客さまが集まってくださいました。

アーティストトークでの作品解説。景徳鎮の勉強をしているという学生さんから、熱心な質問があり、大いに盛り上がったとか。

会場の大パネルの前で、記念撮影タイム。「この歳にしてモテ期が来た!」と大笑いしていたそうです。

そして、この写真を見たとき「作家が行った甲斐があったなぁ!」とつくづく思いました。聞けばこの男の子は将来画家になりたいそうで、毎日絵ばかり描いているとか。描画のデモンストレーションのあいだ、ずっと隣に張り付いて見ていたそうです。スタッフの方が「触らないようにね」「もう少し離れてね」と何度言っても、かぶりつき。

現在は陶芸術家の藤吉憲典、幼少期のころから「自分は絵描きになる」と決めていたそうです。そして今、やきものの上に絵を描いているわけですから、そういう大人の姿をこの男の子に見せることができたのは、とても良かったなぁ、と。機会をくださった銀座黒田陶苑さんに感謝です!

日本現代陶芸の逸品鑑賞体験会。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

日本現代陶芸の逸品鑑賞体験会。

いつもお世話になっている銀座黒田陶苑さんによる、初の上海イベント。2019年11月下旬にスタートしていましたが、このたびダンナ・藤吉憲典も顔を出してまいりました。上の写真は、今企画のパンフレット。展示の趣旨と、各作家の特長がとても丁寧に説明されています。

出品している13名の作家さんの作品の顔ぶれを拝見すると、パンフレットの紹介文に「独特の個性と独自風格」とあるとおり、存在感のある器ばかりです。そのなかの一人として藤吉憲典を取り上げていただいたことを、とても嬉しく思います。

作家来場ということで、急遽開催されたアーティストトークや描画のデモンストレーション。事前告知がなかったにも関わらず、たくさんのお客さまが集まってくださって、ダンナ曰く「あんまり人が多いから緊張して胃が痛くなった」と(笑)

上海での展示は個展を含め三回目。今回も、熱心に作家の話に耳を傾け作品をご覧になるお客さまに出会えたと、喜んでおりました。歴史的に中国から多くを学んできた日本のやきもの文化。上海の方々が日本のやきもの文化に興味を持ってくださることは、その担い手としてとても嬉しいことなのです。

「芸術と日常生活の高度な融合」である日本現代陶芸。上海にお住まいの方、訪問の機会のある方は、ぜひのぞいてみませんか。会期は2020年2月16日までです。

長いお付き合いのお客さま。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

長いお付き合いのお客さま。

花祭窯の創業は1997年。ありがたいことに20年以上のお付き合いのお客さまもいらっしゃいます。個人のお客さまもあれば、飲食店をなさっているお客さまもあり。藤吉憲典の器をずっと気に入って使ってくださっていることは、ほんとうに嬉しくありがたいことです。

そんなお客さまのお一人、新宿荒木町でお店をなさっている「うのすけ」さんから、BS11オンデマンド:太田和彦のふらり旅 新・居酒屋百選 の取材時に器を使ってくださったとお知らせがありました。テレビにしても雑誌にしても、お客さまのお店が好い媒体で取材されたと聞くと、我がことのように嬉しいです。

通好みで呑んべえに人気の番組だそうです。放送を拝見して、うのすけさんのお店の特長が伝わる取材ぶりに感嘆するとともに、そこでお使いいただいた藤吉の器を用いたお料理やお酒が画面に映えていたことに、一安心。やはり器は使っていただいてこそ、ですね。

うのすけさんの回は「呑兵衛の聖地・四谷三丁目ではしご酒」というタイトルで、2020年1月13日放送、同1月27日配信終了予定です。ご興味のある方、ぜひご覧になってみてくださいね。

BS11オンデマンド:太田和彦のふらり旅 新・居酒屋百選

こうして一緒に嬉しさを分ちあえるお客さまがあることがとても嬉しく、ありがたい仕事をしているなぁ、とあらためて思います。

形あるものの強さ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

形あるものの強さ。

「強さ」という表現が合っているのかどうか、ちょっと言葉が見当たらないのですが。仕事はじめに「形あるものを作るからこその喜び」を垣間見る出来事がありました。

数年前、長い海外生活から日本に戻っていらしたばかりというお客さまとの出会いがありました。藤吉憲典のつくる造形作品を特に気に入ってくださり、お付き合いが続いています。つい先日のこと、そのお客さまから「これ、藤吉先生の作品ですよね?」と届いた写真。拝見したところ、窯を開いて初期のころよく作っていた片口でした。

聞けば、お姉さまからお引越しの際に「特に気に入っているもの」として、譲り受けたなかにあったということでした。片口に一目ぼれしたお客さまが、さっそくこれを使おうと洗っていた時に「憲」の銘が目に入り、びっくりして問い合わせてくださったのでした。

そのお客さまのなかでは、藤吉が食器作家でもあることはご存じであったものの、どちらかといえば芸術家のイメージ。一方、お姉さまは「ずいぶん前に器のギャラリーでとても気に入って買った」とおっしゃるだけで、その片口の作家名もご存じなかったのでした。

思いがけず大切なお姉さまから譲り受けた器に「憲」を見つけ、とても驚いたし感慨深かったと、縁の不思議を喜んでくださったお客さま。わたしたちもまた、ありがたい出来事のお知らせに嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

藤吉憲典は、その作陶の志として「国宝より家宝」をずっと掲げています。その意図そのままに、「人から人に大切に受け継がれるもの」となっているワンシーンを見せていただいた出来事でした。