読書『レンブラントをとり返せ―ロンドン警視庁美術骨董捜査班-』(新潮文庫)ジェフリー・アーチャー 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『レンブラントをとり返せ―ロンドン警視庁美術骨董捜査班-』(新潮文庫)ジェフリー・アーチャー 著

2019年に原著が出版された、ジェフリー・アーチャーの新刊です。まずは「え!ジェフリー・アーチャーの新刊!?」と驚いてしまいました。2019年にスティーヴン・キングの『書くことについて』を見つけて読んだ時と同じ驚きです。そう、彼らはまだ現役で執筆しているのですね。ちなみにジェフリー・アーチャーは2020年で80歳だそうです。ずいぶん前から彼らの名前を知っているから、勝手に「ちょっと昔の人」のイメージを持ってしまっていましたが、若くからずっと活躍し続けているということ。あらためて、すごいなぁと思いながら読みました。

さて『レンブラントをとり返せ』。タイトルからわかる通り、美術を取り巻く警察ものです。ジェフリー・アーチャーの著作では、デビュー作『百万ドルを取り返せ』でも画廊街でのストーリーが出てきますし、『運命のコイン』のストーリーのなかでも美術が一定の役割を果たしています。わたしはまだ読んでいませんが『ゴッホは欺く』のタイトルもあり、著者自身の美術への造詣の深さが感じられます。

読後感としては、『百万ドルを取り返せ』や『運命のコイン』を読んだ時のような重さ、衝撃はありませんでした。ジェフリー・アーチャー作品に対する勝手な思い込みがありましたので、正直なところちょっと物足りない感じ。でも裏を返せば、複雑さや難解さが取り払われていて、娯楽的に楽しんで読めるということでもあります。

本書はシリーズのスタートに位置づけられています。これから同主人公が活躍するシリーズがどこまで続いていくかは、ジェフリー・アーチャー自身がどれだけ長生きできるかにかかっていると、本人によるコメントが「はじめに」に添えられていて、思わずニヤリとしました。芸術家の方々を見ていてもそうですが、キャリアに安住することなくチャレンジ精神を持ち続けることが、長く活躍する秘訣なのですね。

目的・内容・方法…社会教育・生涯学習を考える。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

目的・内容・方法…社会教育・生涯学習を考える。

福津市には「郷育カレッジ」という市民のための生涯学習の仕組みがあります。このブログでもたびたび郷育カレッジのことを取り上げています^^福津市やその周辺の「ひと・もの・こと」を題材に、ふるさと・健康福祉・環境・生きがいなどのさまざまな分野で、毎年約100講座を展開。市の郷育推進課が中心となり、ボランティアスタッフの「郷育運営委員」がカレッジ運営をサポートしており、わたしもその末席に加わっています。

2020年度はコロナ対策に追われました。まず計画していた講座のうち7-8月の講座はすべて中止となりました。9月以降も「密」になりそうな講座を中止したり、講師の方との判断で中止にしたり。開催できた講座の数は、当初予定より大幅に少なくなってしまいました。開催の際も、マスク着用や消毒などの基本的な予防はもちろん、受講生の定員数をかなり減らすなど、郷育カレッジの開校以来の対応を迫られた一年となりました。

現在、来年度(令和3年度)の郷育カレッジ開校に向けて、大詰めの検討が進められています。毎年この時期は、講座内容の確定や講師の方々への依頼など、気忙しくなってくるタイミングではあります。それに加え、まだ先が見通せず予断を許さない来年度に向けて、内容・方法についての検討に例年以上に頭をひねっています。

この一年を踏まえて、できるだけ開催できるような形を模索しています。移動や接触が前提となる講座は、来年度については計画をせず、「ソーシャルディスタンスを保った座学」でできる内容を増やすこと。「今だからこそ気になること」を学ぶことのできる講座を増やすこと。そして、方法のひとつとして「オンライン」をどう使えるかも、今後は考えて行かねばなりません。

小学生から大学生まで、学校教育の現場もやり方も一変した昨年一年間。コロナ禍で「方法」の変化を急激に求められた感がありましたが、ここ数年の世の中の大勢としてその流れはありました。大人の学び場である社会教育の現場でも、それは同じです。郷育カレッジの場合、変えるというよりは選択肢を増やすという意味合いでも、「オンライン」を検討の土台に載せることが必要です。ますますたくさんの市民の方々に活用していただけるように、目的・内容・方法を検討していきたいと思います。

実務レベルの課題で、やるべきことが明確なときに、「よろず相談」窓口は便利。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

実務レベルの課題で、やるべきことが明確なときに、「よろず相談」窓口は便利。

よろず相談。国が設置している「起業希望者・個人事業主・中小企業のための無料経営相談所」です。各都道府県に支援窓口が設置されていて、わたしの場合は「福岡県よろず支援拠点」。登録されている各分野の専門家が相談に応じてくれるこの仕組みは、1回1時間までながら、「無料」で「何回でも使える」のがすごいところです。これまで商工会や県・中小機構等の専門家派遣や個別相談でもかなりお世話になってきていますが、それぞれに仕組面や人材面で強みをお持ちなので、使い分けながら助けていただいています。

福岡県では2021年2月現在45名の専門家の方々が登録されています。数年前に初めて使おうと思ったときは、「よろず相談の専門員のレベル」について、辛口の評価をする人も少なくありませんでした。けれど、「無料サービス」と思えば、それは使いよう。自分の解決したい問題がはっきりしていて、そこに合致する専門家を指名することさえできれば、少なくとも自分自身よりは専門知識が豊富で経験を積んできた専門家に出会うことができると実感しています。

では、そんな専門家をどうやって探したらよいのか?わたしはこの1年では、2名の専門家の方にそれぞれ2回づつお世話になっていますが、概ね満足な結果です。今後もそれぞれに「このテーマだったらこの人」という感じでお願いしようと思っています。ちなみに自分の課題に合う専門家を見つけるのには、次のような手順で探しました。

  1. よろず支援拠点に電話をして、解決したい課題に対応できそうな専門家の方のお名前を複数挙げてもらう。
  2. そのお名前をもとにネット検索で、それぞれの会社情報や実績を確認する。
  3. 比較検討したうえで、より自分の課題に合いそうな方を指名する。

上記の手順で探すほか、専門家の方に対応していただくときに、雑談のなかで「こういう課題に対して強い専門家の方をご存じですか?」と、別の分野の専門家についての助言をいただくこともしています。よろず支援拠点に登録している専門家の方々は横のつながりもあるようなので、「専門家の目で見た、他の専門家の評価」をお聞きすることができます。

福岡県のよろず支援拠点の場合は、まず電話で専門家の予定を確認したうえで、サイトから予約を入れるシステムです。希望する専門家の方の予定が空いていれば、数日中に対応してもらえるのも嬉しいですね。使わないとソン!だと思います^^

利用者にとっては無料サービスですが、専門家には当然対価が支払われていて、それは国から(=税金)出ています。1時間を無駄にしないよう、面談時までに聞くべきことを優先順にリストアップして相談していきます。解決に時間がかかりそうなことについては、「また次回、この件でお願いしていいですか?」と確認しておくと、次回相談を入れたときに先方も心構えしてくださります。

よろず相談はもともとは相談窓口に赴いての対面相談でしたが、昨年からは一気に「Zoom利用」に切り替わっています。Zoomではパソコン画面の共有が容易に可能なので、PC上で作業をしながら具体的にアドバイスをいただくことができ、実務ベースで指導していただくのに最適ですね。この点は、ご時世で思いがけず改善された部分。おかげさまで、ありがたくサービスを享受しております。

2020年読んだ本ベスト5。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2020年読んだ本ベスト5。

すでに記事にしたと思い込んでいました…昨年の「読んだ本ベスト5」をまだ出していなかったことに気づき、あわてて読書記録を振り返り。昨年は例年よりたくさん読んでいたうえに、良書との出会いが盛沢山でした。とても5冊では足りない!と思いながらも、選んで選んで残ったのがこの5冊です。上の写真は、第1位の本の目次ページ。

第1位 『美術館っておもしろい!』(河出書房新社)モラヴィア美術館

「展覧会のつくり方、働く人たち、美術館の歴史、裏も表もすべてわかる本」(阿部賢一・須藤輝彦 訳)です。これまでこういう本(美術本ならぬ美術館本)を見たことがありませんでした。アートエデュケーターとして仕事をしていくうえで、常にそばに置いておきたい絵本です。

第2位 『小説 イタリア・ルネッサンス』(新潮文庫)塩野七生

「1 ヴェネツィア」「2 フィレンツェ」「3 ローマ」「4 再び、ヴェネツィア」の全四巻の塩野七生ワールド。アーティストにとって特別な時代「ルネサンス」を、史実をベースに描いた歴史小説です。政治の話のなかに芸術・芸術家とのかかわりが必然的に描かれているのが、かの国での芸術・芸術家の地位・重要性を感じさせるものであり、とても面白く読みました。

第3位 『知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法』(ダイヤモンド社)神田房枝 著

ここ数年美術鑑賞によるトレーニング・研修効果をうたう本が次々と出ています。そんななか「効果が科学的に検証されている、絵画観察を用いたトレーニング」について論じているのが本書の特徴であり、強み。鑑賞教育の担い手にとって、心強い一冊です。

第4位 『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)マイク・サヴィジ著、舩山むつみ訳

英国社会に興味があるので読んだ、というのが一番の動機でしたが、予想していたよりもずっと重い問題提起の本でした。英国だけの問題ではなく、自分の住んでいる国、地域、そして自分自身を省みて考えさせられます。個人的には特に「文化資本の力」と「文化的スノビズム」の二つのキーワードが、課題となりました。

第5位 『運命のコイン 上・下』(新潮文庫)ジェフリー・アーチャー

ソビエト(ロシア)、イギリス、アメリカの近現代史を振り返ることのできる小説。ストーリーの面白さに加え、ジェフリー・アーチャーその人への興味もかきたてるものでした。ここからスタートして『ケインとアベル』『百万ドルを取り返せ!』と、楽しみが広がりました。

ちなみに、ベスト5候補として挙がったほかの本は、トルストイの『アンナ・カレーニナ(上・中・下)』チャップリンの『チャップリン自伝(「若き日々」「栄光と波瀾の日々」)』ディケンズの『クリスマスキャロル』エミリー・ブロンテの『嵐が丘(上・下)』プレジデント社から出た『観光再生』など。特に『アンナ・カレーニナ』と『嵐が丘』は、衝撃的でした。

和・洋の小説、ビジネス書、学術書、絵本まで、たくさんの良書と出会えた一年でした。こうしてあらためて振り返ると、本のおかげで広がった世界があることを、あらためて感じます。感謝!

読書『「日本の伝統」の正体』(新潮文庫)藤井青銅 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『「日本の伝統」の正体』(新潮文庫)藤井青銅 著

なんとも痛快な一冊を見つけました。あとがきに『「これが日本の伝統」に乗っかるのは、楽チンだ』と書いてある通り、実に皮肉に満ちていて、面白おかしく読みました。著者の肩書に「作家・脚本家・放送作家」とありますが、「放送作家」としての経験や視点が色濃く反映されているのでしょう。伝統とビジネス、伝統とメディアの関係性が、さらっと暴かれています。上手に持ち上げられ、作り上げられ、利用されている「伝統」を、目の前に突き付けてくれる本です。

とはいえ著者が『「伝統」そのものを否定しているわけではありません』というのは、読めばよくわかります。多様な「伝統の例」を斬ることを通して、読者自身に何が問題かを気づかせてくれます。深刻な問題提起というよりは、4コマ漫画的な批判精神とユーモアあふれる切り口。ズバッとやられます。

それぞれの事例の伝統度合いを「○○から○○年」というように数値化しているのが秀逸です。「土下座は謝罪なのか?」として『土下座が謝罪の意味を持ち始めて、約90年。国語辞典にそれが載り始めて、約50年。ドラマ「半沢直樹」の土下座から、約7年。』(『「日本の伝統」の正体』(新潮文庫)藤井青銅 著より)とあったのには笑いました。

あとがきに、本書の意図がしっかり述べられています。『「伝統」という看板を掲げてはいるけれど、その実態は「権益、権威の維持と保護」にすぎないケースもあります―ミもフタもない言い方ではありますが。』(『「日本の伝統」の正体』(新潮文庫)藤井青銅 著)の言葉に、大いにうなずきました。伝統工芸の世界「あるある」なのです(笑)

仕事柄わたしも、「伝統」「伝統文化」「伝統工芸」などなど「伝統」を含む言葉をよく使います。無意識に「この言葉を使っておけばとりあえずOK」になっていないか、気を付けなければならないと自省しました。「権威」「ブランド」「伝統」に頼るようになったらお終いですね。

読書『古代エジプト解剖図鑑』(エクスナレッジ)近藤二郎 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『古代エジプト解剖図鑑』(エクスナレッジ)近藤二郎 著

こちらも最近お気に入りの「カメリアステージ図書館の新刊紹介棚」からです。上の写真は、古代エジプトの遺跡からでてくる副葬品のひとつである神聖な「カバ」を、磁器作家・藤吉憲典が作ったらこうなる、というもの。

さてエジプトと言えば、大学生の時に山口県立美術館に来た「大英博物館展」で見たツタンカーメン黄金のマスク、新婚旅行で大英博物館に足を運んだ時に釘付けになったミイラの数々、一時期流行っていた吉村作治先生のテレビで見たピラミッド&スフィンクス、つい最近「雰囲気似てるよね」と言われてちょっとうれしかった(笑)ネフェルティティの胸像…。

本書「はじめに」で著者が『日本でエジプトといえば、「大ピラミッド」・「ツタンカーメン」・「クレオパトラ」の3つの話題ばかり(後略)』『視聴者の多くが(中略)古代エジプト史の歴史の流れを知らないことが多い。』と書いておられる、まさにその通りの認識でした。福岡acad.建築の勉強会シリーズ「第2回エジプト・ローマ」で少し学んではいましたが、知らないことだらけの古代エジプト。

『古代エジプト解剖図鑑』(エクスナレッジ)近藤二郎 著
『古代エジプト解剖図鑑』(エクスナレッジ)近藤二郎 著

著者の近藤二郎氏は、吉村作治先生と同じ早稲田大学エジプト学研究所・所長として調査研究をなさってきた方ですが、本書では学術的な難解さを感じさせることなく、一般向けに専門的な領域を語ってくださっています。「解剖図鑑」とある通り、図解中心の本ですので、読むというよりは「見る」という感じ。写真は全く載っていませんが、単純化されたイラストだからこそわかりやすいです。なんとなく読み始めましたが、面白くて、読了したときには手元に一冊置いておきたいと思ました。

それにしても、古代エジプトの遺物にのこる絵画・図象表現、ヒエログリフの文字表現、建築を含む立体表現の多様さ面白さがたまりません。リベラルアーツは古代ギリシア・ローマに源流を持つと言われていますが、古代エジプト文明もまた、言語的要素・数学的要素・芸術的要素の総動員だと感じました。また「神様」の位置づけが、八百万の神々を拝む日本と似ているというのも、興味深く。自然界のあらゆるものに神が宿るという考え方、人間に不可能な力を持つものを神聖視することなど、なるほどと思わせられました。

エジプトの墳墓から出てくる副葬品のひとつ「カバ」についても、改めて考える機会となりました。アートの世界で最も有名なカバは、ニューヨークメトロポリタン美術館にいる「カバのウィリアム」ですが、これにインスパイアされて作品化する現代アーティストもたくさん。磁器作家・藤吉憲典もまたその一人であり、藤吉の作るカバもまた、世界のあちらこちらでコレクターに愛されています。紀元前の古代から数千年を経て、現代に受け継がれてきたアートの底力を感じます。

寒緋桜(かんひざくら)が届いたら、一気に春っぽくなりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

寒緋桜(かんひざくら)が届いたら、一気に春っぽくなりました。

お友だちが、寒緋桜の大きな枝を1本持ってきてくれました。旧正月の頃に咲きだす、早咲きの桜です。まあ立派!わたしの力量では1本そのままで生けることが難しかったので、いくつかに分けて甕に投げ込んでみました。「いくつかに分け」るのも、ハサミでは文字通り歯が立たずノコギリ出動。花とつぼみがたくさんついていましたので、落とさないように気を付けながらの花仕事でした。

花祭窯 寒緋桜

暦の上では春とはいえ、この日は風が冷たく、寒い寒いと騒ぎながらの外作業。大胆に投げ込んだだけでもなんとかなる(なっていないかもしれませんが^^;)のが、枝ものの力ですね。「さくら」の音の響きと、華やかな桃色で、玄関先が一気に春っぽくなりました。

花祭窯のある津屋崎周辺では、「光の道」で一躍有名になった宮地嶽神社で寒緋桜(その名も「開運桜」!)を見ることができます。

ロンドンのギャラリーから打診される展覧会テーマに、世の中を見る目が広がる。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ロンドンのギャラリーから打診される展覧会テーマに、世の中を見る目が広がる。

つい先日、このブログでも2021年藤吉憲典の展覧会予定をご紹介したところでした。

2021年藤吉憲典の展覧会予定

磁器作家・藤吉憲典のロンドンの契約ギャラリーSladmore Contemporaryと、系列のSladmore Galleryは、「動物の彫刻(animal sculpture)」を専門にするギャラリーです。昨年からのコロナ禍で、ロンドンはたびたびロックダウンとなり、ギャラリーのオープンが限定され、エキシビジョン開催も予定が立ちにくい状態が続きました。

先行きが読めない状況のなか、Sladmore チームから、ひとつのテーマを近代彫刻のマスターピースから現代彫刻の最新作品まで、時代を超えてご覧いただく展覧会へのオファーをいただきました。2021年の一年間を通して企画されています。アンティークからコンテンポラリーまで、動物彫刻を専門に極めてきた老舗だからこそ実現できる内容です。

この流れは、昨年末11-12月開催された展覧会「Dogs, Cats and Other Best Friends」から始まっていました。折しも「人と人の接触を避ける」ことが求められるなかでの、このテーマ。古来から友人・パートナーとして人に寄り添ってきた動物たちに、わたしたちがいかに癒され助けられてきたかを、深く感じる機会となりました。

本年7月には‘Endangered animals A-Z’ Sladmore Gallery(London)が開催されます。Endangered animalsとは「絶滅危惧種」のこと。国連の提唱するSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の17の目標のなかには、「14.海洋資源」「15.陸上資源」が入っており、「生態系の保護回復」「生物多様性の損失阻止」などがうたわれています。「共存共生」もまた、コロナ禍でクローズアップされた概念のひとつですね。

「アートは常に社会とともにある」ことがダイレクトに、それでいて自然体で伝わってくるテーマ設定に、芸術先進エリア・ロンドンの老舗ギャラリーの矜持を見ました。オファーを受けたアーティストは皆、その空間に作品参加できることを誇らしく感じているに違いありません。これらの展覧会に向けての、藤吉憲典の新作にも、どうぞご期待ください。作品の最新情報は、インスタグラムやフェイスブックの公式ページでご確認いただくことができます。

藤吉憲典公式FBページ https://www.facebook.com/KensukeFujiyoshi

藤吉憲典公式インスタグラムhttps://www.instagram.com/ceramicartist_kensukefujiyoshi/

お客さまからのご相談をきっかけに生まれるもの。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

お客さまからのご相談をきっかけに生まれるもの。

芸術家(アーティスト)は「自分勝手に好きなものを作る」イメージを持っている方も多いと思います。たしかにそういう面も強いです。でも「全くの無」からイメージが降ってくるわけではありません。たまに、自分は何からも影響を受けていない完全なオリジナルだと言う作り手がありますが、それは傲慢です(笑)

古今東西あらゆる芸術は、意識的無意識的に「何かにインスパイアされて生まれる」もの。そこには「第三者の意見」も含まれます。「他者の要望に応えて作るのは芸術ではない!」という方は、美術史に名を残しているアーティストたちを振り返ってみると良いでしょう。芸術のあらゆる分野で、王様をはじめ宗教家、政治家、資産家といった「人」や組織のオーダーに応え、そこに自らの創造性を発揮するところから、名だたる作品が生まれ残ってきていることがわかります。

さて、磁器作家・藤吉憲典もまたしかり。藤吉にインスピレーションを与える最も大きな存在は、「身の回りの自然」と「古き良きもの」ですが、彼の作品を愛してくれる常連のお客さま(ギャラリーやコレクターなど)からの相談もまたその源、きっかけとなることがあります。そしてそれらは、作り手にとって、とてもワクワクすることであることが多いです。

上の写真は、10年以上のお付き合いのお客さまからのご相談に応えたもの。古典的でありながら新しい、用途ある装飾品「葉巻用の灰皿」です。ご相談が無ければ、おそらく藤吉自ら作ろうとは思わなかった分野ですが、ご相談を受けて「面白そう!」と思えば集中して取り組むのが、アーティスト気質なのだと思います。

葉巻の専門店に足を運び、根掘り葉掘り話を聞いたり、灰皿などのアクセサリー類をに手にって見てみたり、実際に何本か購入してみたり。また葉巻を吸っている友人から資料を借り出したり、「実際に吸っている人」の立場からの意見を聞いてみたり。最初に相談を受けてから、実際にこうして「ひとつめ」が形になるまで、1年近くかかっています。

なお特別注文のご相談につきましては、ギャラリーさんも個人のお客さまも、親しく価値観や理想のイメージを共有できるお客さまに限らせていただいています。詳しくは「特別注文のご相談について」をご覧くださいませ。

近所に神社があるというのは、何気ないことのようで、ありがたいことなのだと気づく。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

近所に神社があるというのは、何気ないことのようで、ありがたいことなのだと気づく。

波折神社

写真は124年ぶりに2月2日節分祭の波折神社。緊急事態宣言発出中につき、いつもは賑わう豆撒きですが、今年は氏子総代の方々による神事のみとなりました。ただ、お参りした人は「福豆」のお土産をいただくという嬉しい心遣いが、終日行われていました。

お昼過ぎにお散歩がてら出かけてみると、参拝者はわたしをふくめて二人。気兼ねなくゆっくりお参りすることができました。帰ろうとすると、お宮さんの役員の方が「豆持って帰ってくださいね!」と声をかけてくださいました。社務所に寄ると、ちゃんと袋詰めされた福豆が用意してあり。

そういえば元旦もそうでした。どこにもいかない正月でしたので、朝一番にお散歩がてら、波折神社に初詣でをしたのでした。「人が多いかな、どうかな」などと頭を悩ませることなく、徒歩で「ちょっと行ってみようか」と思える距離のありがたさ。そして期待通り、参拝できる環境があることの嬉しさ。

ずっと近所に住んでいて転居した友人が「今住んでいるところの近くにも、職場の近くにも神社が無いんですよね。大きい神社も小さい神社も」と。そういえば、幼いころから現在に至るまで10か所ほどで暮らしたことがありますが、思い返してみると、近所に神社があったのは、わずか3か所。さらに生活のなかにここまで神社が浸透しているのは、津屋崎が初めてのことです。

季節の行事のたびに「ちょっと寄ってみる」波折神社。気軽にお参りできる場所。お参りを通して、無意識のうちに気持ちの安らぎを得ています。そんな場所が近くにあるのですから、ありがたいことですね。