読書『鉄の骨』(講談社)池井戸潤 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『鉄の骨』(講談社)池井戸潤 著

連休中に完了させようと計画していた二つの仕事のうち一つに目途が立ったので、(もう一つは進捗状況ギリギリだけれど)、読書タイム。いつものカメリアステージ図書館で「池井戸潤」検索をかけ、『陸王』読書に続く池井戸作品2作目は、まったくあらすじを知らなかった『鉄の骨』を選びました。

借りてきたのは文庫でしたが、思わず背表紙の厚さを図りたくなるボリューム。中堅ゼネコンに就職した主人公が、マンション建設の現場勤務から通称「談合課」なる本社部署に異動するところからはじまります。公共工事の落札を巡る熾烈な駆け引きが、物語の中心でした。いやぁ、面白かったです。わたし的には『陸王』よりもこっちのほうが盛り上がりました。これはドラマとかになっていないのかしらと、思わずググったところ、神木隆之介さん主演で連続ドラマになっていましたね。神木隆之介さんは素敵ですが、わたしのイメージの平太(主人公)ではないなぁ、などと思いつつ。

実はかつて1年間ほど、某中堅ゼネコンの地方営業所で事務を手伝ったことがあります。仕事のほとんどが民間からではなく公共工事からの受注という会社で、地方の支社とはいえ、たしかに本書で描かれているのと似たような駆け引きが、常に行われていました。わたしの主な仕事は、そうした受注工事の契約書作成でした。その昔、ゼネコン汚職事件でそうそうたる大手各社から逮捕者が出たのは、わたしが社会人になってすぐの頃のこと。それから数年後に、ゼネコンの地方営業所で見た実態に、わたしもまた『鉄の骨』の主人公と同様「結局談合は無くなっていないんだ」と驚いたものでした。

そんなわけで、読書中の脳内キャスティングは、当時の課長・担当者らの懐かしい顔がそのまま浮かんでくるという始末。課長さんは本書に登場する課長さん同様、眉間に皺を寄せ常に胃のあたりをさすって、胃薬ばかり飲んでおられました。

企業小説はやっぱり面白いですね。次は何を借りてこようか、楽しみです。

花祭窯おかみの仕事の半分以上は「新しい展開に向けての仕込み」なのかな、と。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯おかみの仕事の半分以上は「新しい展開に向けての仕込み」なのかな、と。

先日読んだ『陸王』は、創業100年以上の老舗メーカーが舞台でした。この本の主役は中小企業ながらも百年続く老舗の足袋メーカーで、そこが「ランニングシューズ」という新規事業に取り組む話。もちろんドキドキしながら面白く読んだのですが、百年続く老舗では新規事業を考える必要がそれほど無かったらしいというのが、わたしにとってはちょっとした衝撃でした。あくまでも小説の設定ではありますが。

というのも、「新規事業」という大げさなものではないにしても、わたしが花祭窯でしてきていることは、「次どうするか、どうなるか」を考え、「その時」に備えてできる限り仕込みをすることだからです。事業を続けていくための変化を、いつも迫られているような気がします。『陸王』のなかでも最終的にたどり着いた結論でしたが、リスクをとってチャレンジしないことには、既存の仕事を守ることにもならない、というのは、ずっと頭にあることです。まあ、花祭窯の場合はとっても小さな規模の話であり、そもそも守らなければならないようなものは、理念や志のほかには無いともいえるのですが。

そんなわけで、自分自身も新しいことをどんどん勉強して行かないと、すぐに手持ちの札が尽きて、変化に対応できなくなってしまいます。人に会うこともとっても大切。この連休中は在宅でデスクワークに勤しんでいるので、お休みが明けたらフットワークを軽くして参ります。

藍の家で開催中の「五月人形展」を覗いてきました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

藍の家で開催中の「五月人形展」を覗いてきました。

ご近所の登録有形文化財「藍の家」で毎年恒例の季節の行事を見るのは、ご近所散歩の楽しみのひとつです。四月末に前を通りかかったら、ちょうど鯉のぼりが入り口に飾られたところでした。少し前、三月のお雛様の展示も素晴らしかったです。

連休に入り、五月人形の展示がはじまりましたので、観に行って参りました。展示数こそ、それほど多くはありませんが、五月人形の展示を見る機会は、実はお雛様に比べるとずっと少ないので、貴重な機会です。

お雛様の時もそうなのですが、どうしても「道具類」に目が向きます。太鼓や弓、槍(やり)、幟(のぼり)、などの前に鎮座する粽(ちまき)と柏餅のお供えに思わずニヤリ。こういうミニチュアがたまりません。

藍の家 五月人形展

↓居並ぶ兜飾りに混じって、こんな面白いものも見つけました。これ着て、写真でも撮っていたのでしょうね。

藍の家 五月人形展

五月が来るたびに小さな鯉のぼりを嬉々として飾っていた頃を懐かしく思い出しつつ、楽しんでまいりました。

展示期間は5月1日(月)~5月10日(水)まで。津屋崎方面散策の際は、藍の家訪問おススメです。

映画『Air』観てきました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

映画『Air』観てきました。

2023年の三本目は、ナイキのバスケットシューズ「エア・ジョーダン」開発秘話を映画化した『Air』。写真は、シューズではありませんが(笑)いまや家族のなかにスポーツをする人がいれば(あるいはいなくても)、毎日でも目にするナイキのマーク。創業者フィル・ナイトの次にナイキでCEOを務めたマーク・パーカー氏が、藤吉憲典作品のコレクターなので、ナイキ関連の本や映画は、できるだけ観ておきたいと思っています。

舞台は1984年。オープニングから、その映像と音楽に、懐かしさでいっぱいになりました。やられた!という感じ。当時わたしは中学3年生。バスケをするしないに関わらず誰もがコンバースのバッシュを欲しがり、たくさんの人が履いていたこと、中学生のお小遣いで買うには高価だったこと、ナイキからエア・ジョーダンが発表された後の熱狂など、一気に蘇って参りました。そうだった、そんな時代だった、と。

映画のストーリーは、熱を持ちながらも淡々と進んだという印象でした。エンタテイメント映画にありがちな誇張した演出が避けられていたような気がします。映像やセリフによる過剰な説明もなく、観る人によってはわかりにくいと感じる向きもあるかもしれませんが、それもまた個人的には好感を持ちました。できるだけ等身大で当時の出来事を描こうとしたのかもしれませんね。熱い時代を描くのに、さらなる装飾は要らないといったところでしょうか。

コンバース、アディダス、ナイキの社風の描かれ方が面白かったです。もちろん、ナイキ側から見たものではありましょうが、なるほど~、と。またセリフの端々に含まれる、ベンチャーから巨大企業へと成長することによる葛藤など、いろいろと感じるものがありました。一番残ったのは、マット・デイモン演じる主役ソニーの「だから株式公開なんかするべきじゃなかったんだ」というニュアンスの、創業時から一緒に走ってきたからこそ言えるセリフ。そのほかにも、ベン・アフレック演じるフィル・ナイトのセリフ「走ればわかる」や、「禅」に影響を受けたことが端々に現れるセリフが面白かったです。禅に影響を受けたと言えばまっさきにアップル創業者スティーブ・ジョブスの顔が浮かんでいましたが、そのもっと前ですね。

この映画のノベライズがあれば、読みたいな、と思いました。

ともあれナイキといえば、創業者フィル・ナイトの『SHOE DOG』。『Air』は「負け犬たちの逆転勝利」がテーマになっており、ここでもDOGなのですね。

そして、「シューズ開発」といえば、つい先日読んだ池井戸潤の『陸王』。

尊敬する恩人から約5年ぶりに手紙が届いて、ホッ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

尊敬する恩人から約5年ぶりに手紙が届いて、ホッ。

「手紙」なるものの往来がすっかり少なくなっている昨今ではありますが、郵便配達の方のバイク音がすると、条件反射的にワクワクします。実際に郵便受けに届くものは、たいていが手紙ではなく、業務関連の「書類」だったりいたしますが。先日そのなかに、わたし宛の恩人の筆跡を見つけ、思わず小躍りしたのでした。筆跡ですぐにそれとわかるのは、手紙のやり取りだからこそ。

長く東京在住だった彼女が、出身地である京都へと居(または拠)を移したのが5年前。引越しましたのお手紙を頂いた後、音信が途絶えてしまいました。毎年の年賀状を出しながら、それが宛先不明で戻ってこないということは、そこに居らっしゃるはずだと思いつつ、体調を崩されたのかしら、などと心配しつつ。まずは生きておられたこと、ご病気などではなかったことがわかり、一安心。

聞けば、忙しくパワフルに動き回っていた生活から、京都に移ったのを機に「心身ともにちょっとのんびりしよう」と、不義理を承知であらゆる人との連絡を絶ち、ほんとうに自分の好きなように自分のペースだけで生活をするようになったら、それがあまりにも楽(らく)で快適で、だらだらと今に至ってしまったのだということでした。引きこもっていたわけでもなく、楽しく生活していましたよ、と。音信不通を詫びる文面に、彼女が元気にしていらっしゃることがわかれば、それだけで良いのだと心から思いました。

活発で豪快に見えていた彼女ですが、交友関係も幅広く、仕事や生活のなかで多方面に神経を使い、まとまった休息が必要になったのですね。文面からは、彼女の魅力のひとつであるちょっぴり毒のあるユーモアもちらほらと垣間見え、お疲れモードからきっと回復なさったのだろうな、と嬉しくなりました。上の写真は、手紙と一緒に入っていたカレンダー。このカレンダーを届ける!をモチベーションに、たくさんの手紙を書いたのだろうことが伺えました。それでまた疲れたりしていないと良いけれど、でもきっとそれが彼女なのです。

思いがけず嬉しい文字通りの「吉報」から、ゴールデンウィークスタートとなりました。