読書『せどりの女王』(PHP研究所)高殿円著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『せどりの女王』(PHP研究所)高殿円著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、タイトルに釣られて手に取った一冊です。表紙のイラスト装画のビビッドな雰囲気に、一瞬「間違えたかな」とよぎりましたが、読み始めたらめちゃめちゃ良い意味で裏切られました。ナンパな雰囲気を前面に出しているけれど、実は硬派な社会小説、という感じです。

就職氷河期世代の底辺女子が上場企業の社長に「ぶち上る」物語。これだけ聞くと、単なるサクセスストーリーのようですが、その枠に収まり切れません。主人公はわたしより少し下の年齢の設定でしたので、同じ時代を知っています。バブル崩壊、就職氷河期、1995年の阪神淡路大震災、派遣法による弊害など、読みながらその時代のことを強く思い出しました。今の少子化や格差につながる要因が、あの時代にたくさん生まれていたことを、本書を通して思い知らされました。

主人公が、「底辺」を生んだ社会の仕組みをインスタライブで糾弾しはじめたところから、ストーリーははじまります。底辺からぶち上る手段としての「せどり」「インターネット」が一般に広がってきたのも、1995年すなわち「ウィンドウズ95」からのことでした。たしかにあの時代、インターネットの出現によって、出自や学歴などの社会的属性に囚われずに活動できる場が芽吹いたのでした。本書のなかで語られる、黎明期からのネットオークションの話や、そこから上場企業になるまでの資金調達の話など、企業小説としても、読みごたえがありました。

高殿円さん、お名前に既視感があるなぁと思っていたら、読んだことがありました。

2年前ですね。このときも「すごい人を見つけてしまいました」と書いていますが、本書もものすごく面白かったです。

『せどりの女王』(PHP研究所)高殿円著