郷育カレッジ「カメリアステージの歴史資料館を見に行こう」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

郷育カレッジ「カメリアステージの歴史資料館を見に行こう」

福津市民と福津で働く人のための生涯学習の仕組み「郷育(ごういく)カレッジ」。地元福津市のカメリアステージ歴史資料館を紹介する講座に参加してまいりました。

福津市に、歴史資料館と図書館を併設したカメリアステージができてから、まるっと三年が過ぎました。個人的にはすっかり生活の一部となっていますが、まだ三年しか経っていないのですね。開館してから何回か、歴史資料館の説明をお聞きする機会がありましたが、今回は郷育カレッジ講座でその機会をつくることができました。

講座を担当してくださったのは、福津市文化財課の専門職員さん。歴史資料館ができるまでの道のりから、展示・保存管理設備の解説、バックヤードツアーに展示解説と、1時間半という短い時間ながら盛りだくさんの充実した講座でした。

博物館資格取得課程に在籍時に学んだ内容を、思い出しました。以下、備忘。


  • 博物館法等の法令指針に従って作られた施設。
  • 表:展示・公開・教育普及/縁の下:収蔵・保存・調査・研究
  • ゾーニング
  • 所有権、所蔵権
  • 「観覧動線」と「文化財(管理・展示準備)動線」
  • バックヤード(荷解きの部屋・学芸員調査室・収蔵庫)。狭くても役割を持った部屋に「分かれている」ことが大切。
  • 展示→モニタリング→修復等→保存→展示

郷育カレッジ「カメリアステージの歴史資料館を見に行こう」より


決して広くはないスペースながらも充実した展示内容に、さらに面白さを裏付けていただいた解説講座でした。何度聞いても楽しいです。ありがとうございました!

読書『THE CURATOR’S HANDBOOK』(フィルムアート社)

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読書『THE CURATOR’S HANDBOOK』(フィルムアート社)エイドリアン・ジョージ著 河野晴子訳

いつかは!と思って読んでいた本が本格的に活躍しそうで、ワクワクしています。『THE CURATOR’S HANDBOOK』を読んだのは、約4年前。当時は、わたしにとって仕事上なじみの深い美術館・博物館・ギャラリーなどの「文化・文化施設が果たす社会的な役割」について考察する手引きとなる本として、読んでいたのでした。

本書の日本語でのサブタイトルが「美術館、ギャラリー、インディペンデント・スペースでの展覧会の作り方」。サブタイトル通り、第1章から第12章まで “How to” の宝庫です。


目次

第1章 始動する:キュレーションの第一歩
第2章 アイデアを実現させる
第3章 プロポーザル、企画の売り込み、プランニング
第4章 予算と資金調達
第5章 契約、交渉、義務、評価
第6章 展覧会の出版物と物品販売
第7章 展覧会をつくる
第8章 オープン前の数週間
第9章 展示作業
第10章 オープン数日前と当日
第11章 プレスオープンと内覧会
第12章 展覧会会期中、そして会期後

『THE CURATOR’S HANDBOOK』(フィルムアート社)より


「展覧会」。花祭窯の場合、それは「陶芸作家・藤吉憲典の個展」です。主催してくださるコマーシャルギャラリーさんがすべてお膳立てしてくださるので、作品と作品リストをお届けすることに注力し、それ以外は全面的にギャラリーさんにお任せするのが常です。

なので、学芸員資格を持っているとはいえ、自分自身が中心となって「展覧会をつくる」ことは、「いつかできたら楽しいだろうな」と思うぐらいで、具体的にイメージしたことがありませんでした。が、ここにきて「展覧会をつくる」計画が浮上。まさに本書が活かされる状況になりそうです。

ギャラリーオーナーの方々には毎回お世話になりっぱなしです。オーナーさんがどれほどのエネルギーを注いで個展を開いてくださっているのか、身をもって理解することのできる機会になりそうです。とはいえ、まだ計画どころか「アイデア」の段階。開催できるのが来年になるのか再来年になるのか、詳細はこれからです。本書を読みなおし、準備するべきことの多さを考えると、ある程度時間がかかる(時間をかける必要もある)こともわかってきました。

一日も早く皆さんに告知ができるよう、頑張ります!

令和2年度郷育カレッジ、スタートしました。

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令和2年度郷育カレッジスタートしました。

福津市の生涯学習の仕組み「郷育カレッジ」。郷育カレッジとは、「ごういくかれっじ」と読み、福津市民と福津で働く人のための生涯学習の仕組みです。講座の運営をサポートするボランティアスタッフとして、わたしも参加しています。

過去記事:福津市には「郷育カレッジ」があります

郷育カレッジは毎年度7月初旬の開校式を皮切りに講座を運営していますが、今年度はご多分に漏れず7月8月と開校延期・講座中止となっておりました。ようやく9月からコロナ対策を万全に心がけつつスタート。9月以降も、バスに乗っての移動を含む講座など、いくつかは感染防止対策の観点から中止のものがありますが、大切な学びの場が復活して、運営委員の一人として少しホッとしているところです。

今年度の特集講座テーマは「郷育で心も体も健康に」。「情報を集めよう!」「リフレッシュしよう!」「自分自身を知ろう!」「体を動かそう!」の四つの視点から、健康にフォーカスした講座をお勧めしています。特集講座のテーマ決定は約1年前にさかのぼりますが、なんとも今年度にぴったりのテーマでした。

コロナ対策で「密」を避けるため、当初予定していた受講人数を半分以下に絞り込むなど、今年は講座を受講できる人数も限られた中でのスタートとなりました。通常三人掛けの机に一人づつかける、受付に消毒用エタノールを設置する、一講座ごとにすべての机・椅子・出入り口の取っ手などを消毒剤で拭き取るなど、市の郷育推進課職員さんを中心に対策を施しています。

一方で、人数制限のため、せっかくご応募いただいても、抽選で外れて受講できない方が今年は多くいらっしゃる事態となり、心苦しい限りです。この点を踏まえ、来年度は、受講希望の方ができるだけ受講できるよう、人気講座は同じ内容で2回以上の開催をするなどの対策をしようと、今から来年度に向けて話し合いを行っています。

ともあれ、学びの場がオープンしたことは、とても嬉しいことです。令和2年度の講座は、おかげさまで満員御礼の講座が多いようですが、引き続き受講生受付中の講座も、まだいくつかはありそうです。詳しくは、福津市郷育推進課におたずねくださいね。福津市にお住まいの方、または福津市内にお勤めの方でしたら、ご参加可能です。

郷育カレッジに関するお問い合わせは
福津市教育部郷育推進課 電話0940-62-5078 まで。

福津市歴史資料館企画展「新原・奴山古墳群調査研究の現在」。

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福津市歴史資料館企画展「新原・奴山古墳群調査研究の現在」。

9月16日(水)から展示されている、最新の発掘調査結果を拝見してきました。「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群調査研究成果5館連携展覧会のひとつです。他の4館は、宗像大社神宝館・九州国立博物館・海の道むなかた館・九州歴史資料館。

福津市カメリアステージにある歴史資料館では、数は多くはないものの、鉄器・土器・ガラス玉などの副葬品のほか、古墳の建材となった石材も見ることができます。ガラス玉はいつ見ても嬉しくなりますね。また今回個人的に最も興味深かったのは、非破壊検査によるレーダー探査の成果についての説明。「地中レーダー解析画像」見てもよくわからない(笑)ながら、ワクワクしてしまいます。

この「展示資料を見ただけではよくわからない」点については、立派な解説パンフレットがあります。また、なんと!5館の展示担当者による調査研究成果報告会が、2020年10月11日(日)に開催されます。場所は福津市歴史資料館横にあるカメリアホール。定員200名ということですので、興味のある方は、ぜひ早めにお申し込みを。

詳しくは、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群調査研究成果5館連携展覧会の特設サイト https://www.okinoshima-heritage.jp/ でご確認くださいね。

それにしても、地域の古墳を日常的に身近に感じ、発掘調査の結果をその都度歴史資料館で拝見できる環境のありがたさ。あとは現地の発掘調査のお手伝いに行けたら最高ですね。調査はまだまだ続きそうなので、そのうち機会を作れたらいいな、と思いつつ。

ハンズオン=「触る」を考える。

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ハンズオン=「触る」を考える。

接触のプロ・国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎先生による、学芸員技術研修会「ユニバーサル・ミュージアム」から1週間が経ちました。この1週間、日常のなかで意識的・無意識的に「さわる」の捉え方が変化している自分を感じています。

「ハンズオン」は、美術館・博物館的には「さわる展示」であり、教育普及活動における体験型の学習を指しています。美術館・博物館での展示といえば、基本的には「手を触れないでください」のスタンスがほとんど。そのなかで「触れるもの」を選び出し、触る体験を含む鑑賞教育を進めていこうという動きは、全国的に広がっています。

そもそもわたしが「さわる」ことへの関心を持ったのは、花祭窯のおかみとして仕事するようになった20年以上前からのこと。やきもの素人だったわたしが陶磁器の勉強からスタートするにあたり、骨董品も現代ものも、「実際に手に持ってみる、触ってみる」ことで得られる情報は、質量ともにとても大きなもの。「見ただけではわからない」ことのなんと多いこと。そのため、美術館・博物館だけでなく、手に取って見ることのできるギャラリーや骨董店に足を運んで学んでおりました。

おススメする立場になると、さらに「さわること」の意味の大きさを感じるようになります。「作家ものの和食器」の良さをお伝えするにあたり「実際に手に持った感じがどうか」はとても重要です。だからこそ、その場所を提供してくださるギャラリーさんには、ほんとうに感謝しています。

よく工芸品などにおいて「手づくりの良さ」といわれることがありますが、こと食器をつくる作家においては、単に「手でつくったから温かみがある」などというぼんやりしたものでは意味がありません。手や指にあたったときの感触、持った時の重さ、重心の位置による持ちやすさのバランスなど、制作工程において実際に手で扱っているからこそ気づき、修正できるきめ細やかさがモノに反映されてこその「手づくりの良さ」なのです。

花祭窯のギャラリーにお越しになるお客さまとお話していると、ほんとうによい器を探しておられる方は、必ず自分の手にとって、丁寧にご覧になります。ワレモノを扱っているわけですが、こちらが注意を促す必要もなく、さわるマナー(なぜ触るのか=作法、どう触るのか=技法)が身についておられる方がほとんどです。一方、せっかくご来店なさっても、絶対に触ろうとしない方がいらっしゃるのも事実。そういう方々が花祭窯で器をお買い上げになることは、まずありません。

学芸員技術研修会「ユニバーサル・ミュージアム」のなかで広瀬先生のおっしゃった「拒触症」の言葉に、強烈なものを感じました。「見ればわかる」という思い込みや、視覚偏重が進む世の中への危機感を内包した言葉です。いろいろなものが画面越しに済ませられる時代になってきたからこそ、触ること・体感することの価値はより大きくなるように思います。

わたし自身、「触覚」をもっと磨いていきたいと、あらためて思う今日この頃です。

学芸員技術研修会2020「ユニバーサル・ミュージアム」

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学芸員技術研修会2020「ユニバーサル・ミュージアム」

今年度は開催が無理なのかもしれないな、と思っていた矢先、「学芸員技術研修会」の案内が届きました。研修を主催する事務局・先生方に心より感謝いたします。

今だから尚更お話を聞きたいと思い申し込んだのは、国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎先生による「ユニバーサル・ミュージアム」。ユニバーサル・ミュージアムとは「誰もが楽しめる博物館」のこと。「ハンズオン(さわる展示)」による博物館教育を積極的に取り入れる館が、ここ数年増えています。わたしもまた鑑賞法の一方法として「さわることによる鑑賞」について学びたいと思っていた研修会でした。

蓋を開けてみれば、単に鑑賞法として以上に「アートの意味」「触ることの意味」を深く考えさせられる研修となりました。接触、さわることが避けられるようになった今年、自称「濃厚接触のプロ」である全盲の広瀬先生のお話を聞くことができたのは、これ以上ないありがたいタイミングであったと思います。

「世界をつなぐユニバーサル・ミュージアム-“触”の大博覧会から2025大阪万博へ-」と題された広瀬浩二郎先生のお話より、以下備忘。


  • 触文化、見常者、触常者、拒触症、濃厚接触
  • 触覚とは、手だけではなく全身の感覚。身体感覚を総動員して体感すること。
  • 見てわかること、さわってわかること。
  • 気配=気配り
  • なぜハンズオン(さわる展示)?あらためてミュージアムにおける「触る」の意味、「さわるマナー」の意義を考える。
  • なぜさわるのか=作法、どうさわるのか=技法
  • さわろうとしない人たち=「見る場所」として刷り込まれている。「見ればわかる」という思い込み。
  • 見ただけでは(画面越しでは)伝えられない情報って何だ!?
  • 点字力=したたかな創造力、しなやかな発想力。点字には「さわる」の要素がすべて集約されている。
  • さわる展示の多様性=視覚優位・視覚偏重の価値観・人間観に対する異議申し立て。
  • 目が見える人も「触常者」になれる。
  • 今「万博」をやる意義=国や地域による違いではなく、個人の世界観の違いに注目する展覧会にできる(かも)。

さわることが奪われた今だからこそ、その意味、価値を深く考えるチャンスにしなければ、という広瀬先生の強い想いの伝わるお話でした。今回は時節柄座学による講座でしたが、来年度以降、ワークショップも含めた「ユニバーサル・ミュージアム」に必ず参加したいと思います。

ミュージアム周遊パス。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ミュージアム周遊パス。

今年度も発行されました。九州・沖縄文化力推進会議が発行する「ミュージアム周遊パス」。九州山口沖縄エリアの美術館・博物館版クーポン付フリーペーパーです。クーポンの内容は、入場料の割引だったり、粗品の進呈だったり、図録の提供だったり。

何が嬉しいかって、九州沖縄エリアに、これほどたくさん文化施設があるとは知らなかった!ことに気づける冊子なのです。今年度の冊子には170施設の特典クーポン付き。ということは、規模の大小はあれど、170以上もの文化施設があるということです。福岡県内を見ただけでも、行ったことが無い場所がたくさんあることに気づきます。

巻頭には9ページにわたり、九州・沖縄の世界遺産の紹介記事がコンパクトにまとまっています。「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」「明治日本の産業革命遺産」「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の四つ。もう四つにもなっていたのですね。

まずは近場から、ということで、掲載されている市内の2施設へ参りましょう。花祭窯から徒歩1-2分で行ける津屋崎千軒民俗館「藍の家」と、いつも図書館とセットでお世話になっているカメリアステージ歴史資料館へ。今年は何ヵ所行けるかな。

クーポンの利用期限は2020年8月1日から2021年1月31日までとなっていますが、ハンディタイプの軽くて便利なガイド本として、ずっと使えます^^

読書『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社)スティーヴン・マーフィー重松

「マインドフルネス」についてちょっと知識を仕入れる必要に迫られ、まずは図書館でキーワード「マインドフルネス」検索であがってきた本を、手あたり次第借りて参りました。極端なスピリチュアル系からがっつりビジネス系まで、たくさんあるだろうなと思ってはおりましたが、その予想を上回る多さ(笑)。現段階で読んでいるのは数冊ですが、そのなかでは、わたくし的には最もしっくりきた一冊です。

マインドフルネスという単語は、なんとなく「瞑想」とか「禅」とか「ヨガ」とか「スティーブ・ジョブス」とか「グーグル」とかと結びついてイメージしていた程度で、ちゃんと本を読んだのは初めてでした。本を読む(頭で考える)よりも、実践したほうが、体感による理解は早いだろうなと思いつつ。

本書は良い意味で特に斬新さや驚きを感じるものではありませんでしたが、マインドフルネスってやっぱりそういうことだったのね、と納得でき、自分のなかで解釈を深めることができるものでした。茶道と重なるものがたくさんあったのは、利休の茶道精神に加え、わたしが入門している南方流が、禅寺の茶道であることも大きいかもしれません。またエデュケーションの視点で見ると、対話型美術鑑賞の方法論と効用に通じるものが、とてもたくさんありました。

数ある「マインドフルネス本」のなかにおいて、分野的には、How to本というよりは考え方や本質を理解するための本です。が、章末ごとにエクササイズが載っていて、これが秀逸です。ほんの数行のエクササイズですが、これを実践することが、そのままマインドフルネスな状態を導いてくれることでしょう。わたしもまずは、ここからスタートしてみようと思います。

復習『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』(仙台文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

復習『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』(仙台文庫)齋正弘著

アートエデュケーション(美術教育)の原点確認に、本書を学びなおし。わたしが学芸員資格課程を修了したのが2013年の秋。その3年後、2016年の秋に参加した学芸員技術研修会で、自分にとって最も大切なテーマが「美術教育(アート教育)」であることに気づいたのでした。

わたしが持っている仙台文庫版は、たしか廃版になっていました。中古で手に入れるしかないのかな、あるいはどなたか復刊してくださるといいな、と思いつつ。

3年ぶりに読み返してみて、美術の役割を再認識しました。いわく「美術は、全ての人間が全部一人一人違うということを基礎に、人間全体の世界観を拡大してゆくということが存在の意義である」。少し言い換えると、「一人一人違う世界の見方」が肯定されていることが、わたしたちが生きている近代市民社会であり、美術はその基礎にある「ものの見方」を訓練するものである、ということです。

そういう意味において、美術と文学はとても似ていると思います。ビジュアルによるアプローチか、文字によるアプローチか、の違いはあれど。図書館を利用するように美術館を利用し、本を買うようにアートを買い、読書をするように美術鑑賞する。そんな生活スタイルが、日本でももっとあたりまえになるといいな、と思います。

Talking about Art 4回目。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

Talking about Art 4回目。

英語で対話型美術鑑賞のオンラインセッション第4回目。『英語でアート』の宮本由紀先生による「Talking about Art in English」。第1回目第2回目第3回目に続く今回も、発見がたくさんのエキサイティングな時間でした。一方で、個人的には反省点満載の1時間。

由紀先生が用意してくださった今回のテーマは、Still Life × Narrative Art。Still Lifeは静物画、Narrative ArtはStory Artとも言うようですが、物語画とでも訳したらよいでしょうか。

開催中のロンドン・ナショナル・ギャラリー展にちなんで、展示作品のひとつディエゴ・ベラスケスの「マルタとマリアの家のキリスト」をメインに。美術ファンにとっては、いわば「旬」の題材で、由紀先生の心遣いを感じます。

いつもの通り「Describe」すなわち「なにが見える?」からスタートです。思惟を交えずに、なにが見えるかを淡々と並べていきます。ある程度出揃ったら、次は「Analyze」=「どう見える?(どう描かれている?)」。何があって、どのように描かれているかを自分の目でしっかり確認することができれば、あとの「Interpret(なぜだと思う?)」、「Evaluate(どう思う?)」にスムーズにつながります。

今回わたしの大きな反省点は、なんといっても「準備不足」でした。日常会話でさえ語彙力が不足しているのに、アートの描写、それにまつわる自分の考えを伝えるとなればなおのことです。Talking about Artへの参加も4回目とあり、雰囲気にも慣れてきて、怠慢が出てしまったと反省しました。

まず最初のDescribeで、自分に見えたものと、他の方に見えたものの違いの大きさに気づいた途端、頭が真っ白になりました(笑)。「見る人によって、見えるものが違う」のは美術鑑賞の大前提であり、だからこそ対話型鑑賞は面白い!のですから、ほんとうは慌てる必要など無いのです。

これはエデュケーターの立場でも、参加者の立場でも、一番大切にすべき大原則であり、猛省しました。「自分にだけ違って見えている」というのはこれまでにもあったことで、それを楽しんでもいたのですが、今回は特に思い込みが強く働いていたのかもしれません。軽いパニック状態です(笑)

焦りに加えて、語彙が足りず、さらに焦る悪循環。そんな状態でも「何を言おうとしているのか」を受け取ろうと、先生だけでなく、一緒に参加していた受講者の方々もあたたかく見てくださっているのがわかり、とても助けられました。オンラインでも「受容する場の空気感」がひしひしと伝わりました。

さて自分の言葉は足りないのに、対話型鑑賞自体は楽しいものですから、意見交換では伝えたいことがどんどん出てきます。これはやっかいです(笑)。伝えたいのならば、ちゃんと準備をしなければ!を痛感。

ともあれ、皆さんのフォローに助けていただき、無事(!?)1時間が終了しました。参加者が、ほかの方々との「見えているもの」「捉え方」の違いに焦ってしまうこともあるのだと、身をもって実感しました。「受容的な場」あってこその対話型鑑賞ですね。

また今回は、題材の「マルタとマリアの家のキリスト」をもとに、西洋画における宗教的要素とシンボルについても言及され、知識という意味でも視野の広がったTalking about Artでした。