蕎麦猪口倶楽部ちょっぴりリニューアル。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

蕎麦猪口倶楽部ちょっぴりリニューアル。

花祭窯・藤吉憲典のつくる蕎麦猪口と小皿豆皿の専門オンラインショップ「花祭窯 蕎麦猪口倶楽部」をちょっぴりリニューアルいたしました。

https://hanamatsurigama.com/

  • これまで:ご注文→制作→お届け(2-3か月後発送)
  • これから:在庫表示→ご注文→お届け(即日発送)
    在庫切れのもの→予約注文→制作・お届け(2-3か月後)

ご要望の多かった「今、どんな在庫がありますか?」に対応いたしました。在庫表示をして、あるものはすぐに発送するように変更いたしました。また、在庫切れ表示となっているものは、蕎麦猪口倶楽部のお問い合わせフォームから予約注文をお受けいたします。どうぞ遠慮なくお問い合わせくださいませ。

今回の変更に伴い、少しづつ在庫を充実させていく所存です。現在のところ、特に蕎麦猪口では「Sold Out」表示が乱立しておりますが、小皿豆皿は少しづつ選んでいただける状態になりつつあります。

料理人さんなど、まとめてのご注文をご検討の皆さまも、遠慮なくお問い合わせくださいませ。ご相談をお待ちいたしております。

こどもの日。→こどもの月。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

こどもの日。→こどもの月。

5月5日は子どもの日。花祭窯の玄関先には、恒例となった「鯛の豆皿で見立てた鯉のぼり」を飾っています。

鯛の豆皿 藤吉憲典

津屋崎に工房を移してすぐのころでした。藤吉憲典の定番ロングセラーのひとつである鯛の豆皿を「子どもの日に孫にお祝いで贈りたい」とお買い求めになったご婦人から、ヒントを頂戴した「鯛のぼり」。

今年は緊急事態宣言下であることから、5月10日(日)の母の日を、拡大して「5月は母の月」にして祝おう!という流れがあります。毎年母の日前後は、贈りもの需要で宅急便などの物流は大忙し。これを「母の日」→「母の月」にすることによって、少しでも荷物の集配を分散しましょう!ということのようです。

理由はどうあれ「お母さんに感謝する日」が1日から1か月間に広がるのは、とっても好いこと。ならば「こどもの日」だって「こどもの月」でよいのではないか!?と思ったのでした。じゃあ、6月の父の日は…ということで、6月は「父の月」でしょうか。

ともあれ、感謝したり祝ったりという気持ちは笑顔を呼びます。ならばこの際「○○の日」→「○○の月」とする動きを、個人的に加速していってみよう!と決定した、子どもの日の朝(笑)。

呑んべえの器。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

呑んべえの器。

ダンナ・磁器作家藤吉憲典は、このところ食器づくりに勤しんでいます。アート作品と、用途美の器。この両翼があることが、創造・制作に好い刺激になっていることを、傍で見ていて感じます。アートが器から学ぶこともあれば、器がアートから学ぶこともあるのだなぁ、と。

久しぶりに食器ばかり作っているわけですが、その出来上がりを見ていると、ちゃんと「食べる」「飲む」「手に取って使う」への心配りが、なされていて安心します。そんなのは当たり前!の筈とはいえ、作家ものでもそのイメージが出来ていないと感じられる器は少なくありません。

器を見ると、そのつくり手が、ふだんから家で自分の器や、他の作家さんの器を使っているかどうかがわかります。それは、そもそもつくり手自身が「いい器で、食べたり、飲んだりする時間を楽しみたい!」と思っているかどうか、にも通じるように思います。

そういう意味では、一番わかりやすいのは、酒器かもしれません。本人が酒を愛する呑んべえかどうかで、出来上がりがかなり違ってくるのを感じます。実際に我が家にあるぐい呑みコレクションを眺めてみると、作家さんは、皆さん呑んべえ(笑)

そして、たいていの呑んべえは「食べる」ことも好きで、男女問わず自らお料理をする方も少なくありません。すると、やっぱり食器の作り方も違ってくるのです。意図せずとも、「家呑み」の効用がつくりに反映されるのですね。

そんなわけで、わたしは呑んべえのつくる器をお勧めします^^

小皿の新作。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

小皿の新作。

先週末に「新作が生まれるワクワク感。」なるタイトルでブログを書いておりました。今朝、赤絵窯が上がって、出てきた新作が上の写真の面々。

六角の亀甲型に三つ足の高台。ものすごく丁寧な作りです。カタチが出来上がった時点で「いいねぇ、どんな絵がつくのか、出来上がりが楽しみだねぇ」と言っていた六角小皿。ようやく完成形で目の前に現れました。

サンプルの段階なので、同じ形にいろいろな絵が載っています。実際にこうして出来上がりを見てみてから、定番化するものと、そうでないものとが出てきます。

つくり手のイメージ通り、イメージ以上にあがってくるものがある一方で、そうでないものも出てくるのが、新作制作の常。20年以上のキャリアを積んだ昨今は、イメージから大きく外れることは少なくなってきているようですが、それでも「窯を開けてみないとわからない」のです。

ともあれ、新作の誕生はワクワクがいっぱい。染付の山水文もいいし、赤絵万暦もいいなぁ、と、感想を述べるばかりのわたしは呑気なものです(笑)

春の風物詩。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

春の風物詩。

いかなごのくぎ煮。いつのころからか、兵庫県に住む友人が毎年作って送ってくれます。今年もつい先日、届きました。これが届くと、もうそんな季節ね、と思います。

いかなご漁はこのところ厳しいようで、解禁しても不漁で高値とか。年々価格が高騰している様子が伝わってきます。「今年はこれだけしかつくれなかった!」と言いながら、くぎ煮をつくって送ってくれるお友だちの気持ちに感謝。

うん、美味しい。ご飯もお酒も進みます^^

写真で使っているのは、藤吉憲典の染付花鳥文木甲縁小皿

続々・あらためて蕎麦猪口、文様編。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続々・あらためて蕎麦猪口、文様編。

文様編、つづきの続きです。

江戸時代中後期、江戸の庶民に広がった蕎麦やうどんとともに、蕎麦猪口も広まっていきます。いわば、庶民文化。文様がたくさん生み出されたと同時に、たくさんの数の蕎麦猪口が生み出されました。

これはつまり、職人たちによる「大量生産」が始まったことを意味しています。肥前磁器の制作工程は細かく分業化されており、「絵付け」ひとつとっても、染付(藍色)の線描き、ダミ(色塗り)、赤絵の線描き、赤絵のダミ(色塗り)と分かれます。さらに線描きのなかでも「器裾の二重線ばかり描き続ける人」「口縁の文様ばかり描き続ける人」「メインの文様を描く人」など…。

それぞれの職人さんは、文様全体ではなく「部分」だけを描き続けるため、次第に文様の意味を考えることなくスピード重視になっていきます。繰り返し、複数の職人さんの手で描き継がれることにより、元の文様が何であったか不明なものが、たくさん生まれました。描き間違えたり、省略してしまったりしたものが、そのまま引き継がれた結果です。

そんな背景もあって、文様の解釈も、時代により、地域により人により実にさまざまです。どの解釈が正しいということではなく、扱う人がそれぞれに自分なりの解釈をして想像を広げていくことも、文様の楽しみの一つであると思います。

だからこそ、現代に蕎麦猪口を作る藤吉憲典のスタンスは、「古典をきっちりその通りに写す」のではなく「最初の一作目の気持ちで、丁寧に写し直す」。縦長の線一本とっても、上から下に向かって描くべきなのか、下から上に向かって描くべきなのかは、それがもともと何を描いたものなのかによって変わってくるのです。

蕎麦猪口という限られた形状に広がる文様世界。日本の四季の美しさ、江戸の人々の生活、異国文化の影響など、扱う人の想像力とともに、世界はどんどん広がっていきます。文様に込められた願い、縁起のいわれなどを知ることで、蕎麦猪口を一層楽しんでいただけるといいな、と思っています。

このブログでも何度もご紹介していますが、やきもの文化は「写し」の文化です。「写し」については、こちらにもご紹介しています。

※『蕎麦猪口の文様小話』「ふじゆりの蕎麦ちょこ蒐集」編より 、一部加筆修正。

続・あらためて蕎麦猪口、文様編。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・あらためて蕎麦猪口、文様編。

文様編の続きです。

日本の磁器文化は、1600年初頭に朝鮮半島から伝わり、その後中国大陸のやきもの文化・技術に学び、独自の進化を遂げてきました。その歴史、約400年。やきものの文様世界には、中国・朝鮮の文化が影響しているのはもちろん、遠くインドやペルシャ文化の流れを感じさせるもの、仏教文化の影響を感じさせるものもあります。

こうした渡来文化を倣いつつ、日本(肥前地域=現在の佐賀)の季節や自然など陶工たちの生活文化のなかにある身近なテーマが加わったり、蕎麦猪口が運ばれ使われた江戸の風俗が反映されたりして、日本独自の発展を遂げていきました。

日本の四季折々の美しさが描かれた蕎麦猪口は、季節により器を変え、器で季節を感じる和食文化を、手軽に感じることができる道具のひとつ。蕎麦猪口と呼ばれる筒型の器ひとつの形に、「桜」ひとつとっても百種を超える文様がデザインされているとも言われています。

次回はその文様を「引き継ぐ」ことの実際についてお話します。

※『蕎麦猪口の文様小話』「ふじゆりの蕎麦ちょこ蒐集」編より 、一部加筆修正。

あらためて蕎麦猪口、文様編。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

あらためて蕎麦猪口、文様編。

に続いての三篇目は文様について。

現代作家として、藤吉憲典が蕎麦猪口にどのように文様をつけているか。これは蕎麦猪口以外の和食器にも当てはまるところがありますので、「蕎麦猪口」と書いているところを「器」と読み替えていただいても大丈夫です。

一般に、やきものにおける和食器のデザインは、古典文様の写しが引き継がれていることが多いです。これは藤吉に関しても同じく。今、我が家の展示スペースに並んでいる器の顔ぶれを見ても、八割から九割方は、江戸時代の古典に倣い、発展させたものです。

骨董の世界でも収集者の多い蕎麦猪口の面白さ、人気の秘密のひとつは、バラエティに富んだ文様世界。研究者により数百種、数千種ともいわれる多様な文様が大きな魅力です。

骨董品の実物や破片あるいは写真資料で垣間見ることのできる、蕎麦猪口に描かれた文様の種類は、干支、昆虫、動物、草花、幾何学文、人物、山水、気象、季節の風物など多種多様。世の中のあらゆる事象が文様の素材となるのでは、と思えるほどにデザインの宝庫です。

次回は、その中身を少し見てまいりましょう。

※『蕎麦猪口の文様小話』「ふじゆりの蕎麦ちょこ蒐集」編より 、一部加筆修正。

続・あらためて、蕎麦猪口。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・あらためて、蕎麦猪口。

昨日の「あらためて、蕎麦猪口」の続きです。2004年に発行した、蕎麦猪口の魅力をまとめた小冊子「蕎麦猪口の文様小話」から抜粋してご紹介。


はじめに~そばちょこって(後半)

※「はじめに~そばちょこって」前半はこちら

猪口(ちょこ/ちょく)の語源としては、中国語で盃(さかずき)の意味を持つ「鍾」(しょう)の発音からきているというのが有力のようです。「猪口」の漢字を当てはめたのは、器の形が猪(イノシシ)の口に似ているから、とか。

現在では「猪口=おちょこ」で盃などを呼ぶのに使われるのが一般的ですが、古くは今で言う小鉢の役割に近いものが猪口と呼ばれ、かたちも大きさもさまざま。用途も和え物などの料理を盛る、調味料を入れて皿に添えて出す、飲み物を飲むのに用いるなど幅広く、いろいろな形のものを総称して猪口だったのだろうと想像されます。

そんななかで蕎麦のつけ汁用に程好く、また蕎麦湯のの身勝手の良い形、サイズのものが蕎麦猪口と呼ばれるようになったわけですね。そんな背景を知ってみると、現代のわたしたちが「食べる」「飲む」さまざまな場面で便利に蕎麦猪口を使うのも、なるほどあたりまえに思えてきます。

※『蕎麦猪口の文様小話』「ふじゆりの蕎麦ちょこ蒐集」編より


次は文様の話に続きます。

あらためて、蕎麦猪口。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

あらためて、蕎麦猪口。

蕎麦猪口は、作家・藤吉憲典にとっても、わたし自身にとっても、花祭窯を営んでいくうえでの一つの精神的支柱です。いわば、基本のなかの基本。

藤吉憲典の器=肥前磁器の素晴らしさを知っていただく入門編として、ご相談があった時には、蕎麦猪口をお勧めしています。その理由は、もともとはやきもののド素人であったわたし自身が、蕎麦猪口の魅力に引っ張られて学んできたからにほかなりません。

蕎麦猪口を楽しむことは、日本の磁器の歴史や江戸時代の風俗を学ぶことにつながり、食べる器・飲む器と食文化を考えることにつながります。実用的に楽しみながら教養が身につく。そのきっかけとなる器が、蕎麦猪口です。

そんな蕎麦猪口の魅力をまとめた小冊子「蕎麦猪口の文様小話」をまとめたのは、16年前。引き出しを整理していたら出てきたので、少しづつ内容をご紹介することにいたしますね♪


はじめに~そばちょこって

「蕎麦猪口」ってなんでしょう。そもそも小碗、小鉢のような形のものが「猪口」と呼ばれており、「そばちょこ」は「蕎麦」用の「猪口」だから、蕎麦やうどんのつけ汁を入れる器。

わたしたちが「蕎麦猪口」と呼ぶ器が盛んに作られたのは、蕎麦やうどんが庶民の食文化として広まった江戸時代中期~後期。ところがそのころ既に「そばちょこ」という言葉で呼ばれていたかというと定かではないそうです。

※『蕎麦猪口の文様小話』「ふじゆりの蕎麦ちょこ蒐集」編より


つづく。