藤吉憲典シルクスクリーン作品「昇龍」

新たなチャレンジはイメージ通りに進むばかりではないけれど、イメージのズレから生まれるものもある。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

新たなチャレンジはイメージ通りに進むばかりではないけれど、イメージのズレから生まれるものもある。

思えば昨年2024年11月、イタリアに出張したダンナ・藤吉憲典がミラノのギャラリーから「ケンの書画作品を、より気軽に楽しめる普及版があるともっといいのだけれど」という提案をもらって帰ってきたのが、事のはじまりでした。

運よく熱意あるシルクスクリーン職人さんと出会うことができ、書画作品から最初のふたつをイメージ通りにシルクスクリーン作品に仕上げることができたのは、ほんとうにラッキーでした。スタート時にこの小さな成功体験があったからこそ「GO!」と突き進めることができたと思います。

そこから福岡デザインワークショップでのブレストや、シルクスクリーン職人さんとの対話を通じて、台紙(和紙)の選定や「見せ方」の検討、どのようにブランディングしていくかなどを考え続けてきたこの一年。ほんとうにまる一年かかったなぁという思いです。が、一年でここまで構想が進み、具体化に至っているというのは、案外早かったのかもしれません。年明け早々に、いつもお世話になっている信金さんから誘われて、初めての「地元BtoB展示商談会」なるものへの参加を決めたのも、新規事業お披露目のタイミングを決める契機になりました。

まだまだ先だと思っていたその展示商談会はいよいよ来週。商談会で発表予定の作品ができあがったということで、シルクスクリーン職人さんの元へ出かけてきました。新たに出来上がった作品群は、原画の墨の濃淡のニュアンス表現の難しさ、台紙となる和紙の取り扱いの難しさを技術でカバーし、かなりの完成度で仕上がっていました。が、頭のなかにあった出来上がりイメージとは少々ずれているところも。その裏には、シルクスクリーン技術に関しては素人のわたしたち自身はもちろん、大量の作品制作経験を積んでいる職人さんでも予期できなかった難しさもあったようです。

そうした「難しさ」を踏まえて、ではどうするか。そこからが、アーティスト・藤吉憲典の創造力の見せ所であり、作品の魅力をアップするアイデアにつながるのですから、面白いところです。難しいからこそ、ほかの人にはできない(あるいはやろうと思わない)ことができるわけで、独自の表現になります。おかげで、最初のイメージからさらにナナメ上をいくような作品群を作り出せそうです。

藤吉憲典シルクスクリーン作品

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。