読書『トロイの女たち』(早川書房)パット・パーカー著/北村みちよ訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『トロイの女たち』(早川書房)パット・パーカー著/北村みちよ訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。なんとなく既視感があって借りて参りました。読みながらも、いくつかの描写に「このシーン知ってるかも」の既視感。読み終わっても、既視感の原因には気が付かなかったのですが、ブログを書く段になって「もしかして…」で、以前に同著者の本を読んでいたことに気が付きました。読書『女たちの沈黙』(早川書房)パット・パーカー著/北村みちよ訳、です。早川書房の公式サイトによると、本書『トロイの女たち』は『女たちの沈黙』の続編。

舞台は『女たちの沈黙』に引き続き、今から3千年以上前に起きたと言われているトロイア戦争です。中世から近世のあいだ、トロイア戦争は神話だと考えられていたものが、1870年代のトロイア遺跡発掘から史実の可能性を見直され、研究が続いているのだそうです。本書は、古代ギリシアとトロイア王国(現トルコ)との戦いを描いた叙事詩『イリアス』を、女たちの側から描いた物語。全三部作のうちの第一部『女たちの沈黙』、第二部『トロイの女たち』という位置付けで、このさきに完結編となる第三部が続くようです。「訳者あとがき」でも、この続きを日本の読者に届けたい!という気持ちが伝わってきましたので、早川書房さんに期待して待ちましょう。

さて物語は、有名な「トロイの木馬」による作戦が、いよいよ決行されるシーンから始まります。読みながら頭のなかで、木馬が宮殿内に運び込まれ、木馬のなかから兵士たちが飛び出すイメージが、鮮明に浮かび上がってきました。勝敗が決した後、戦いの「戦利品」あるいは「奴隷」としてやり取りされる女たちの運命と、そのなかで生きていく彼女たちのそれぞれの立場・ぞれぞれの思いが、ストーリーの核となっています。無力感のなかでもできることをなそうとする、登場人物の女性たちの静かな気概と誇りに頭が下がる場面がいくつもありました。

歴史上の出来事を小説にしたものは昔からたくさんありますが、近年、語り手・目線を変えて描き直したものが、洋の東西を問わずたくさん出てきているそうです。そこには時代の要請もあるのだろうと感じます。人種を変えて、宗教を変えて、性別を変えて…これまで「語り手」となり難かった人たちに語らせたらどんなストーリーになるのか。複数の視点が提示されることで、視野が広がり想像力が鍛えられるように思います。

『トロイの女たち』(早川書房)パット・パーカー著/北村みちよ訳