読書『地べたから考える』(筑摩書房)ブレイディみかこ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『地べたから考える』(筑摩書房)ブレイディみかこ著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。筑摩書房の「ちくまQブックス」です。公式サイトによると、ちくまQブックスは「10代のためのノンフィクションシリーズ」だそうで、それで子ども向けの本の並びにあったのね!と合点しましたが、大人が読んでもぜんぜん良いと思います。というか、ぜひ大人にも読んで欲しい一冊です。

ブレイディみかこさんは、ちくまQブックスのサイトでの本書紹介欄では、その肩書がライター・コラムニストと書いてありましたが、エッセイストとして知られているのではないでしょうか。英国の「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始し、日常にひそむ社会の問題をエッセイの形で発信し、最近は小説も書いていらっしゃるようです。福岡のローカル紙・西日本新聞でもたまに連載があり、読者としては楽しみのひとつ。お子さんの姿を通して社会問題を描いた『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)が有名です。と言いつつ、まだわたしは両書とも呼んでいないのですが^^;。

さて本書。「アンソロジー」ということで、著者がこれまでに書いたエッセイのなかから、選りすぐられた15編を読むことができます。巻頭の「はじめに」に「生きるための問いは立てるものではなく、立ってくるものであり、すでに立っているもののことだ。」と書いてあります。そのすでに立っている問いに対して、見ないふり無かったふりをしないで向き合うことが、著者のスタンスであり、この「Qシリーズ」の意図でもあるのだろうな、と思いました。

英国における階級社会のありようを見ることで、日本における(無いものとごまかされてきた)階級社会のありようが照らし出されていると感じました。著者のパートナーの言葉に、自分たちの息子が親の一人がイエロー(日本人)であるという理由で、いつかいじめられる時が来るから、幼い時から格闘技を習わせているというのがあり、なるほどこういうのは日本と変わらない感覚かもしれないと理解できるエピソードでした。英国での生活では階級社会であるのがあからさまであるにもかかわらず、生まれも育ちも現在も「労働者階級」であると自認する著者にとって、日英どちらの方が生きやすいかという問いに対しての解は、著者が英国に住み続けているという事実が語っています。

実は、昨年ロンドンに行ったときに、同じようなことを、アテンドさんが言っていました。藤吉憲典の作品を扱ってくださるギャラリーは、英国王室が顧客リストに名を連ねる、いわゆるアッパークラスの人たちが集まる場所です。そこでのパーティーの翌日に、電車で30分ほどの場所にある「労働者階級のエリア」に連れて行ってくれました。そこには、福祉的な観点で工芸の担い手が活動できる場所が公に設立されていて、たくさんのクリエイターが制作活動をしていました。同じロンドン市内でも、その二つの場所の間には、地理的にも心理的にも(線は目に見えなくても)明らかな境界がありました。ただそこでアテンドさんに言われたのは、労働者クラスエリアにはそこでの世界・生活がきちんとあって、アッパークラスがうらやましいとか、そのような発想は無いのだということ。今回本書を読んで、アテンドさんがおっしゃったことが、あらためてよくわかったような気がしました。

『地べたから考える』(筑摩書房)ブレイディみかこ著