海外美術館の教育普及ツール、その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その2。

写真は、今が満開のご近所の桜。今日のブログの内容とは関係ありません^^

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介していきたいと思います。その第2弾。

今回試してみたのは、引き続きNational Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムから、Exhibitionコーナーのビデオ前回ご紹介したKid’sプログラムでウォーミングアップしたあとは、少し長めの美術鑑賞にチャレンジです。

このコーナーにも約50のビデオが紹介されています。わたしもまだ全部に目を通したわけではありませんが、「見るだけでも楽しい」という意味では、National Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムのなかでは、Kid’sプログラムに次ぐとっつきやすさだと思います。

こちらは一般向けのプログラムになりますので、話される英語のスピードも内容も、一般向けのレベルになってきます。それでも、映像に合わせて比較的短いセンテンスが多いのに加え、すべてに英語字幕が入っているので、助かります。わたしは音声と文字とで意味を拾っていくことで、なんとなく理解できるかなぁ、という感じ。ただ「英語」に引っ張られてしまうと「鑑賞」への集中は削がれてしまいますね(笑)。逆に、美術鑑賞を利用して英語を学ぶ、というスタンスの方には最適だと思います。

Exhibitionコーナーというだけあって、展覧会での鑑賞をサポートするような映像のつくり方だと感じました。わたし個人的には、英語の意味を考えず映像だけで楽しめるものも少なくありませんでした。また、内容は展覧会のテーマによるので、絵画や彫刻といった美術作品だけではなく、取り上げられているテーマが様々なのも興味深く。なかにはアポロ11号のミッションをテーマとしたものなどもあります。

National Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムから、Exhibitionコーナーのビデオ

興味が湧いたら、のぞいてみてくださいね!

海外美術館の教育普及ツール、その1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その1。

前々からチェックしたいと思っていた、海外美術館のエデュケーションツール。これまでにもこのブログで何回かご紹介している『英語でアート』の宮本由紀先生が、その著書内でエデュケーションにお薦めの美術館サイトをご紹介くださっています。

そのなかから、実際に自分で試してみたものを、少しづつご紹介していきたいと思います。その一発目。

その1:National Gallery of Art, Washingtonの、Kid’s用ビデオ

所蔵品のなかから、50点の絵画がピックアップされていて、子ども向けに音声解説がついています。解説はすべて英語なのですが、わたしが最初に子ども向けを選んだ理由は、自分自身の英語レベルでも比較的聞き取りやすいから。

絵画なのでもちろん絵自体は動きません(部分的にCGで動かしているものもありましたが)。でも、カメラ=視線・視点を動かしながら解説することで、絵画鑑賞の要である「絵をよく見る」への集中が促されます。1本=1作のビデオの時間は、ほぼ3分以内。長いものでも3分半ぐらいですので、集中力を持続できます。

作者名を見れば、ドガ、ラファエロ、マネ、モネ、レオナルドダヴィンチ、ゴッホ、ルーベンス、セザンヌなどなど、よく聞く名前も多く並んでいます。なんか聞いたことある名前だな、という絵から見てみてもいいし、メニューの絵を観て惹かれるものから見てみてもいいし。

興味が湧いたら、ぜひ試してみてくださいね♪

National Gallery of Art, Washingtonの、Kid’s用ビデオ

大学の美術館。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大学の美術館。

1月にこのブログで、今年観に行きたい美術展の情報を上げておりましたが、そこに追加したい情報です。

今日から新年度ですね。上の写真は、福岡市にある九州産業大学美術館2020年度展覧会予定。今年度最初の展覧会「家具をつくる」は、スタート日が変更になっていますので、お出かけの前にご確認くださいね。

大学美術館の良いところは、その大学や、学校のある地域に縁のある作家や作品が集められていることと、展示に大学での研究成果を反映させることができるところにあるのではないでしょうか。それを大学関係者だけのものとせず、一般の人々にオープンになっているところが少なくありません。

ここ数年、学芸員技術研修などでお世話になっている九州産業大学の美術館は「コレクションを本学の芸術教育研究に役立てるとともに、学外にも公開して地域の方々の楽しみと学習に資するため、2002年4月に開館しました」(九州産業大学美術館ウェブサイトより)というもので、積極的に地域からの観覧受け入れをしています。

今年大学創立60周年ということで、今年の企画展には特に力が入っているようです。なかでも個人的に「行くぞ!」と思っている展覧会を二つご紹介。

〇第29回九州産業大学美術館所蔵品展「絵画と語らう―風景・動物・人をめぐる旅―(2020年9月11日-10月11日)

鑑賞教育にぴったり合いそうな展覧会タイトル!と思ったら、既に地域の小学校からの訪問予定が何件も入っているということでした。初めての絵画鑑賞にも向いていそうです。

〇九州産業大学創立60周年記念特別展「酒井田柿右衛門×九州産業大学=MIRAI」(2020年10月17日-11月15日)

学内にある伝統みらいセンター所蔵の古陶磁も観覧できるということで、楽しみな展覧会です。

九州産業大学美術館の2020年度すべての展覧会予定(PDF)

↑こちらで予定表をご覧になることができます^^

文章を書く愉しみ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

文章を書く愉しみ。

最近、周りにNote(ノート)で文章を書いている人が増えてきました。仕事上の話を発信している人、ごく個人的な出来事を日記のようにしたためている人、読書記録を付けている人、旅行記や料理レシピなど誰かの役に立ったら嬉しいという気持ちで文字にしている人…。ウィキペディアによると「noteは文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品配信サイト」とありました。

ツールや目的はともあれ「文章を書く」ことを楽しむ人が増えているのだと思うと、なんだか嬉しくなってきます。かくいうわたしにとって、この「ふじゆりスタイル」は「自分自身のための備忘録」的な位置づけです。今確認したら、2013年3月5日が最初になっていましたので、なんともうすぐ7周年!

といっても、最初からすんなり継続できたわけではなく、それまでに何度も「ブログスタートしては3日坊主」を繰り返していました。どんどん書けるようになってきたのは「読んだ人に少しでも役に立つようなことを」という意識をなくして、自分のために書きはじめたから。人の目を過剰に気にしなくなると、文字がするすると出てくる…もともと文章を書くのは好きなんですね。

自分のために書きだしたブログがきっかけで、今ではコラムの提供をするようにもなりましたから、ありがたいことです。そういえば昨年読んだ本のなかに『読みたいことを書けばいい』(ダイヤモンド社)がありました。自分が読みたいことを書くのが一番ですね。

コラム「日日是好日」提供中。

読書『ヴィクトリア朝ロンドンとシャーロック・ホームズ』(原書房)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ヴィクトリア朝ロンドンとシャーロック・ホームズ』(原書房)

映画をDVDで観て、小説を読んで、シャーロックホームズ博物館に行って、帰ってきて関連書籍を読んで…。シャーロックホームズが特別好きなわけではありませんが、体験がつながっていく面白さを楽しんでいる今日この頃です。

『写真で見る ヴィクトリア朝ロンドンとシャーロック・ホームズ』(原書房)アレックス・ワーナー編

本書はロンドン博物館で開かれた展覧会を機会にまとめられた小論集。編者をはじめとしたキュレーター、文学博士等の5名の著者によるものです。そういえばロンドン博物館も、地元の方から「おススメ」と教えていただいていたのですが、足を運べませんでした。これは次回の楽しみということで。

「はじめに」で「これほどたびたび映像化の対象となってきた架空のキャラクターは、ほかにいない」と書かれている一文が、心に刺さりました。確かに「架空の」キャラクターであるにもかかわらず、リアルに感じられる存在感。

シャーロックホームズ博物館を訪問して感じたのが、まさにそこでした。同行者が思わず口にした「ホームズこんなとこに住んでたんだね、もっと広い部屋だと思ってた」という言葉。まさに「架空」の存在を超えていることを物語っていました。いやいや、本のなかの話だし!と(笑)「コナン・ドイル博物館」ではないのです。

そんなホームズの魅力が、マニアックに掘り下げられています。タイトルに「写真で見る」とついているように、豊富な写真資料が入っていますが、特筆すべきは文章の面白さ。それぞれの著者の、ホームズ愛とロンドン愛が、ひしひしと感じられる一冊です。

V&A博物館と自然史博物館。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

V&A博物館と自然史博物館。

12月7日。上の写真は自然史博物館前に出現していたメリーゴーランド。クリスマスシーズンとあって、スケートリンクも登場していました。ロンドン市内を回る最終日は、定番のふたつの館へ。ナショナルギャラリー同様、何度行っても飽きず、回りつくすことのできない場所です。

今回のヴィクトリアアンドアルバート博物館は、ダンナの希望によりジュエリーコーナーから。「必ず観たいところ」は決めておいて最初に行かないと、辿り着く前にお腹いっぱいになってしまうので、これまでの反省を踏まえて。入るとすぐに、ボランティアガイドさんがフロア案内の声をかけてくださり、すんなりと目的の部屋へ行くことができました。

ロンドンビクトリアアンドアルバート博物館

「小さくて美しいもの」という意味で、ジュエリーの世界は藤吉憲典のアートの世界と共通しています。また「身の周りの機能美」という点では、器の世界と共通するものもあります。きらびやかな展示を拝見すると、ジュエリーのコーナーだけで早くも胸がいっぱいになりました。

お昼ご飯をはさんで、お隣の自然史博物館へ。平日は、学校や幼稚園などからの子どもたちの訪問でにぎやかな自然史博物館、週末とあって家族連れでいっぱいでした。先生と一緒に、あるいは保護者と一緒に、子どもたちがあたりまえに何度も足を運ぶようになる、博物館との心理的距離の近さをあらためて思いました。

今回のロンドンでの個展タイトルは “The Porcelain Animal Boxes of KENSUKE FUJIYOSHI” でした。動物をモチーフにした作品の多い藤吉憲典にとって、ふだん公園や動物園で観る鳥や動植物の姿はとても大切です。同様にこの自然史博物館のように、間近で大きさや質感を感じることができる場所も、とても貴重な場所です。

ミュージアムの恩恵を存分に堪能した一日でした。

ザ・デザインミュージアム。

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ザ・デザインミュージアム。

12月6日。こちらも今回初訪問となった、ザ・デザインミュージアム。写真はエントランスから眺めたところ。文字部分が 「USER」 「MAKER」「DESIGNER」とループし続け、館の理念を伝えていました。

アートエデュケーターとして美術館・博物館めぐりをする際、「ミュージアム」の重要な要素として、「建物そのもの」「展示内容」「エデュケーション」に注目しています。このデザインミュージアムも、他の多くのロンドン市内の館と同様、いずれにおいても満足度の高いものでした。

2016年末にリニューアルオープンした本館は、コンラン卿が創設者。すべてにおいて「デザイン」が意識されていることを体感できる空間でした。なかでも、無料で観覧・体験できる常設展のあちらこちらに配置されたエデュケーションの仕掛けが秀逸でした。

上は、パッドを利用してデザインの要素を学ぶことができるもの。要素の組み合わせによって完成形がどう変わるかを、ビジュアルで理解することができます。雑誌や地下鉄や道路標識などのデザインに挑戦でき、単純ながら、デザインの基礎が直観的に理解できる仕組みになっていました。

こちらは何種類も提示してある課題のなかから、街灯とバックパックのデザインに取り組んでいるところ。作りたいのは何か、誰に使ってもらうのか、そこに求められる要素は何か、考えながらデザインをおこしていけるよう、1枚の紙にまとめられた課題がたくさん置いてありました。

下の写真は、そのたくさんある課題のなかで、わたしが一番気に入ったテーマ「わたしの家族のロゴをデザインする」。

エデュケーターがついてガイドする時間帯もありましたが、ガイド無しで回っても楽しめる仕組みになっていました。デザインの仕事を志す方には、根っこを見つめなおす場として特におススメです。

期待以上の面白さでした。雑誌カーサブルータスのサイトに、ザ・デザインミュージアムの魅力をわかりやすく紹介した記事がありました。ご参考まで。

シャーロックホームズミュージアム。

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シャーロックホームズミュージアム。

12月5日。今回訪問を楽しみにしていた場所のひとつが、シャーロックホームズミュージアムでした。小説にはじまり、テレビドラマ、映画と、その世界観が広がっているシャーロックホームズ。中学生になった息子は、映画版のシャーロックホームズから入って、小説を読み、今回のミュージアム訪問となりました。

こじんまりとした空間である本館は、チケット販売が当日現地のみで、常に行列ができていて、入れ替えをしながらの入場となります。隣接するミュージアムショップは自由に入れるので、ショップだけ行ってきた!という人も少なくないようです。

さて当日、幸い待ち時間15分ほどで入ることができました。わたしたちの前には、先生に引率されて東欧方面から来たと思われる子どもたち十数人のグループ。聞けば彼らも日本でいえば中学生ということで、国は違えど、だいたいそれくらいの年齢から、シャーロックホームズに興味が出てくるのかな、と面白く。

小説のなかの世界であるはずが、しっかりと作り込まれた空間と、スタッフの方々のコスチュームをはじめとしたプロフェッショナルな姿に、ホームズが過去に実在していたかのような錯覚を覚えました。観覧し、解説を受け、館内への滞在はおそらく30分ほどだったのではないかと思いますが、個人的には十分満足の行く時間でした。

次に小説を読むときは、今回の訪問前とは異なるイメージが湧いてくることでしょう。「現地訪問の面白さ」を感じたシャーロックホームズミュージアムでした。

リージェンツパークとナショナル・ギャラリー。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

リージェンツパークとナショナル・ギャラリー。

12月3日。上の写真はナショナルギャラリー内の一角。この深紅の壁紙を見ると、ロンドンに来たなぁ、という気持ちになります。

個展のオープニングを翌日に控え、午前中は宿近所のリージェンツパークへ。時期的にお花が少なく、木々の葉も散りつつあるところでしたが、青空に緑の芝生が美しく、気持ちのよいお散歩日和。目的地を決めずに歩き続けると、突如あざやかな赤が目に飛び込んできました。紅葉が残っていたようです。ラッキー。

公園の南東側からどんどん北上し、ロンドン動物園を横目にさらに進むと「リトルベニス」と呼ばれる小運河に出ました。河岸に雰囲気の良い教会があって、中庭でクリスマス準備中のサンタ姿の青年を発見。モミの木と思しき木がたくさんあり、そのサイズによって値札を付けている最中でした。なるほど!

ブラブラ散歩と言いつつ、3時間ほど歩いていたようです。自然を満喫したあとは、ナショナルギャラリーへ。ちょうどクリスマスツリーのてっぺんに星を付ける作業中でした。珍しい瞬間に立ち会えて、これまたラッキー。

ロンドンナショナルギャラリー

ナショナルギャラリーは3回目ですが、何回行っても飽きません。それどころか、まだまだ見尽くすことができていません。教育普及にも評価が高いので、気持ちと時間に余裕があったら、学芸員さんによるガイドツアーを体験したいとも思っていたのですが、それは次回に。でも、今回も大満足でした。

館内にも立派なクリスマスツリーがありました。ロンドンがすごいなと思うのは、市民が日常的に憩える公園と美術館が、あちらこちらにあって充実していることです。滞在中は毎回その恩恵を存分に受けているわたしたち。つくづくありがたいと思います。

学芸員技術研修会「博物館教育」2019。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

学芸員技術研修会「博物館教育」2019。

毎年楽しみな齋正弘先生の博物館教育。今年度は、春にリニューアルオープンした福岡市美術館での開催でした。「教育普及学芸員」としての在り方を考える研修会。毎回楽しいながらも、気がついたらエネルギーを消耗しています(笑)写真は、今回の研修内で実施した「見る」を知るための作業の、わたしの成果物。

以下、備忘。


  • 図工≠美術。
  • 自立した美意識がはじまると「美術」が可能になる。
  • 美意識が始まるのは、自分で選択ができるようになってから。
  • その境目が、おおよそ10歳ごろ。
  • 世界の見え方:どこから見る?どう見る?何を見ている?
  • 好きなものしか描け(か)ない・作れ(ら)ない。
  • 運動神経。
  • ひとつの絵から、見た人がそれぞれ別の方向に広がっていけるのが「良い鑑賞」。
  • 例えばうちの例(磁器の芸術)で考えたとき「400年前→200年前→現代」で、どう進歩しているか。
  • 建物、環境、展示作品(美術)。
  • 美術館・博物館は「これが宝物だ」を教える場所。
  • 「その前」に思いを至してみる。
  • その作品が出来上がる前/その作品が出来上がるまで。
  • 絵を描く前には必ず「見る」。
  • 知っていることしか使えない。知っていることからいかに多方面に拡大していくか。
  • ピクセルを上げる。
  • キャパシティ。
  • 鑑賞教育≠解説。
  • 社会教育は、学校教育ではできないことをするのが使命。
  • そもそも博物館・美術館は社会教育の担い手である。
  • ワークショップの肝は「準備しない」「成就を目指さない」。
  • リソースの確認→スコアの作成→実行→リソースの確認→…の繰り返し。


あいにくの雨となり、楽しみにしていた美術館探検は屋外が使えず、屋内でのワークショップに変更。わたしにとっては、これが思いがけず貴重な時間となりました。「見る」ことの確認、「準備しない」ワークショップなど、あらためて実体験を通して得るものが大きかったです。

毎年この機会をつくってくださる九州産業大学の緒方泉先生に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。